NHK:政府代弁放送? 籾井会長発言の危うい問題点
毎日新聞 2015年02月23日 15時28分(最終更新 02月23日 20時00分)
元NHKディレクターの戸崎賢二氏に尋ねると「NHKは、集団的自衛権や原発再稼働反対の市民運動をほとんど報じてきませんでした。沖縄の辺野古基地建設反対の住民に対するひどい過剰警備も伝えていません」と、鳥越氏と同様に「政府寄り」の傾向を指摘。「安全保障関連の法整備についても、批判的に報道しない恐れがあります。自衛隊の海外での軍事行動の拡大が心配な時代に、NHKが国策放送局化する危険があるのではないか」と危惧する。
NHKの混乱が続く中、自民党は新型「国際放送」の創設を目指す。慰安婦、靖国神社などの問題について政府の立場を発信するのが狙いだ。海外向けの英語放送としては「NHKワールドTV」があるが、「今の枠内では、報道の自由など基本的な制約が多い」との理由だ。
「待った」をかけるのが永田氏だ。「外国語で発信すれば済むという問題ではなく、相手国の文化、歴史を理解して丁寧に伝える必要がある。国際社会からはプロパガンダに見られるだけです」。そして真の狙いをこう見る。「政府の方針に従わなければ国際業務を召し上げるという、NHKへの揺さぶりです」
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が12日に発表した「世界報道の自由度ランキング」で、2010年に11位だった日本が15年には61位へと下がった。特定秘密保護法の施行などが影響したと見られるが、NHKが「国営放送」に近づけば、さらに報道不自由の国になりかねない。
板野裕爾放送総局長は18日の定例記者会見で「(5日の会長発言は)慎重に検討しろという意味と理解している。どのようなテーマを取り上げるかは我々の編集権に委ねられている」と述べ、籾井氏をフォローしたが、問題の沈静化には至っていない。
「報道の世界からお引き取り願いたい」(大谷氏)。籾井氏はニュースの中心にいる。【瀬尾忠義】