NHK:政府代弁放送? 籾井会長発言の危うい問題点
毎日新聞 2015年02月23日 15時28分(最終更新 02月23日 20時00分)
昨年1月25日の就任会見で籾井氏が「(慰安婦は)戦争地域にはどこにもあった」「なぜオランダに今も(売春街を示す)飾り窓があるのか」などと「放言」したのが騒動の始まりだった。今年1月にはお笑いコンビ「爆笑問題」がNHKの番組で政治家ネタを却下されたことを明かしたことについて、個人名を挙げたネタは一般論として「品性があってしかるべきだ」と語った。そして今回の発言。
この人の「問題発言」に慣れてしまって驚かなくなるのが、むしろ怖いほどだ。
武蔵大教授(テレビジャーナリズム論)の永田浩三氏は「就任直後の発言は、あるいは『不勉強だったから』と弁解できたかもしれませんが、もう通用しない。公共放送のリーダーとしてこの1年、何も学んでいないことを露呈したのですから」とあきれる。
NHKOBの永田氏は、慰安婦問題を取り上げた番組の統括プロデューサーだった。政治家の圧力があったとの指摘がある番組改変問題を検証しようとして制作現場を追われ、退職した。慰安婦問題に正面から取り組んできただけに、「外交問題に発展する恐れがあることもよく考えて……」との籾井氏の釈明を「反戦、平和の番組はたとえ政府と対立してでも放送するのがNHKの使命。『外交』を理由に報じないなんて、でたらめな理屈です」と切り捨てた。
もちろん、NHK会長にも直言できる立場の人たちはいる。その選出、辞任に権限を持つ「経営委員」である。
「経営委員は、就任以来の発言から、籾井氏が適格性に欠けることは分かったはずです。それなのに注意するだけにとどめ、解決を先送りしてきた責任は重い」。そう批判するのは立教大の服部孝章教授(メディア論)だ。
浜田健一郎委員長は20日の衆院予算委員会で、民主党議員から籾井氏の罷免を要求されたが、「事態の一刻も早い収拾を」などと述べ否定した。
同じ公共放送として、比較されることもある英BBC放送について、服部教授はこんなエピソードを語る。
「イラク戦争の報道で英国政府と対立すると、BBCの会長と経営委員長は抗議の辞任をしたのです。その行動が示すように、職を賭しても報道の自由を守るとの自負があるからこそ、報道機関は国民の信頼を得られるのです」
巨大放送局はどこへ向かおうとしているのか。