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「町の傷痕忘れない」 “震災遺構”保存進む富岡駅

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改札口や駅名標などが保存されるJR富岡駅=2013年9月20日
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富岡町民に親しまれたJR常磐線富岡駅の改札口などの備品が町の「震災遺構」として保存されることが分かった23日、「震災を風化させてはならない」と町民は保存の意義を語った。駅舎が流されるなど津波で甚大な被害を受けた駅は解体工事が進み、当時の面影は残っていないが、保存される備品が地震と津波、原発事故の三重の被害に遭った町の姿を後世に語り継ぐ。
町の計画で駅は現在よりも北側に移設される予定だ。駅の解体工事は1月に始まり、改札口や駅名標などは工事に伴って取り外され、現地に取り置かれている。町は今後、備品の線量を測定し、問題がなければ「ふくしま震災遺産保全プロジェクト」の協力を得て保存に向けた処理をする。保存場所は決まっていない。
町担当者は「震災、原子力災害を風化させず外部に発信する材料になる」と説明する。「豊かな土地柄があったことを後世に残せる」とも述べ、町の歴史を伝える貴重な資料としての可能性を挙げた。同プロジェクトのメンバーで、県立博物館主任学芸員の高橋満さん(45)は「駅は生活に根差した場所として地域の歴史を物語るものだが、津波で全てが失われた。(備品は)日常が津波で破壊されたことを物語っており、津波の威力を証明する遺構として残す意味がある」とする。
高校時代に通学などで駅を利用した、富岡町からいわき市に避難している平山勉さん(48)は「本来であれば駅そのものを保存するのが一番だが、後世に伝えるという意味では(改札口などは)格好の素材」と話した。ただ、町民は震災で苦しい思いをしている。「改札口などを見てつらいと思う人もいる。賛否両論あると思うが(保存は)必要なこと」とした。
町は今後も、震災遺構として町民の生活や震災の爪痕を残す物品の保存を検討する方針。
(2015年2月24日 福島民友トピックス)
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