M&Aとは切っても切り離せない関係にある用語に、「のれん」があります。
のれんとは、M&A価格がM&Aされた会社の純資産を上回るとき、その超過額をいいます。たとえば純資産50の会社を80でM&Aしたとき、30がのれんとなります。
買収された企業に存在する収益を生み出す力(プレミアム)として取得者が判断した額で他のBS科目では表現することのできないもの、ということもできるでしょう。ある意味でM&Aの積極度をあらわすこの数字、見立てどおりに進めば利益を創出しますが、想定外のシナリオが実現したときには減損となってBSを痛めることもあります。
今月は、グリー社がポケラボ社やOpenFeint社ののれん183億円の減損を発表したり、ネクソン社がgloops社ののれん110億円の減損を発表したりするなど、IT業界で「のれん」が話題となりました。 そこで、サイトM&Aでは、12月末決算においてのれん残高が相対的に多く計上されている大手IT企業の情報を整理いたしました。「のれん」という観点から企業のM&Aを振り返る、というコンテンツとしてお読みいただけましたら幸いでございます。
大手IT企業ののれんと純資産(2014年12月末)
時価総額1,000億円以上、のれん/純資産比率が10%以上の企業を選定いたしております。
ソフトバンク
のれん残高 :1兆6,356億円
のれん/純資産 :43%
のれん償却方法:IFRS適用のため非償却
主なのれん残高:スプリント社など
2006年4月にボーダフォン社のM&Aを実施しており、1兆円を超えるのれんを計上しました。現在は、主なのれん残高としてスプリント社3,330億円が開示されております。
楽天
のれん残高 :3,636億円
のれん/純資産 :85%
のれん償却方法:IFRS適用のため非償却
主なのれん残高:Ebates社、Viber社など
のれん残高を決算説明資料にて開示しており、当資料によると、2014年にM&Aを実施したEbates社994億円、Viber社993億円が全体ののれん残高の半分以上を占めております。国内では楽天銀行社328億円が残高として残っております。
リクルート
のれん残高:1,757億円
のれん/純資産 :25%
のれん償却方法:10年以内定額償却
主なのれん残高:Staffmark Holdings社など
2015年1月にオーストラリアの人材派遣会社2社を350億円で取得しております。世界戦略はM&Aを軸に進めていくという峰岸社長の発言もありました。
DeNA
のれん残高:527億円
のれん/純資産 :24%
のれん償却方法:IFRS適用のため非償却
主なのれん残高:ngmoco社、ペロリ社、iemo社、横浜ベイスターズ社など
2010年10月にアメリカのngmoco社を342億円で取得しておりますが、その際に発生したのれんが大きな部分を占めているようです。直近でもペロリ社とiemo社を取得しており、合計34億円ののれんが新たに計上されております。
ネクソン
のれん残高:354億円
のれん/純資産:10%
のれん償却方法:IFRS適用のため非償却
主なのれん残高:gloops社など
2014年12月の決算発表で、gloops社に係るのれんの減損損失110億円計上を発表しております。gloops社に係るのれんは残り203億円計上されているとのことです。
グリー
のれん残高:131億円
のれん/純資産 :12%
のれん償却方法:20年以内定額償却
主なのれん残高:Funzio社など
2014年12月の決算発表で、ポケラボ社とOpen Feint社に係る、のれんの減損損失183億円計上を発表しております。ポケラボ社は2012年10月、Open Feint社は2011年4月に、それぞれ、138億円・85億円で取得しております。
クックパッド
のれん残高:26億円
のれん/純資産 :14%
のれん償却方法:5~7年の定額償却
主なのれん残高:コーチユナイテッド社など
直近では2014年10月にアラビア語のレシピサイト運営のNetsila S.A.L社を13億円で取得するなど、クロスボーダーのM&Aが目立っております。
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