今回の講師は、メディア・アーティストの真鍋大度さん。国内外のアート・プロジェクトに参加するなど、多彩なパフォーマンスを展開。2006年には株式会社ライゾマティクスを設立し、ウェブからインタラクティブ・デザインまでのメディアを通じ、企業やファッション・ブランドの展示システムを企画・制作されています。さらに2009年には『scoreLight』という作品によって、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞しました。
コンピュータやロボットと人間との関係は、この先どうなっていくのでしょうか?
少し前までは「インタラクティブ」という言葉がトレンドのようになっていて、「なんでもかんでもインタラクティブにすればいい」というような雰囲気がありました。しかし、これからは「機械学習」という技術を使って、人工知能的なものをつくることが増えていくことになります。すると今度は、どうやってデータを吸い上げ、どう使っていくかが重要なポイントになってきます。そのデータを使用し、どのようなサービスをするのかについてはまだわかりませんが、そういうセンスが問われる時代になってきたのです。
たとえばグーグルで検索することは、自分の興味をグーグルに教えることでもあります。フェイスブックで友だちとつながっていくのも、自分の友だち関係をフェイスブックに伝えるということです。そして、いまブラウザ上で起きていることが、今後は腕時計のようにウェアラブルなかたちで用いられるようになっていったりもします。そうなった場合、いろいろな情報を端末に提供していくことになるため、「自分が教えたくないのは、どこのラインかな」ということに焦点が当たるようになります。
たとえば、グーグルのGメールを使っているということは、メールの内容も含めたすべての情報をグーグルに提供するということです。つまり、その内容に応じて広告が出されることについても承諾したことになるのです。Gメールを使っている人は多いと思いますが、では、心拍数などの生体データの提供についてはどうでしょうか? 今後、もっと技術の精度が上がってきたとき、そういったものも提供すべきなのか? これからは、そういったことも考えるべきだと思います。
ウェアラブル端末のようなメディアは、最終的には広告的に使われることになると考えています。具体的にいえば、「夜中の心拍数が140の人は、こんな音楽を聴いています」というようなデータがあると、他の人が「その音楽をちょっと聴いてみたいな」と思うかもしれないということ。従来のアマゾンの購入履歴のようなものだけではなく、嘘がつけないデータや、口コミだけでは成立しないデータが意味を持ってくるということです。心拍数の情報だけではなにも推測できないかもしれませんが、たとえばそこに発汗などのデータが加わってくると精度も上がり、そうすると広告も変わってくるわけです。
いま、メガネにセンサーがつき始めていますが、今後は帽子やヘッドフォンにもセンサーがついて、「いま自分がどういう状態か」ということが常にデータとして収集されるようになるかもしれません。「こういう音楽を聴いているときは、こういう状態」とか、「こういうものを食べているときは、こういう状態」というようなデータがどんどん蓄積されてくと、そこから新しいサービスがつくられていく可能性があるということ。つまりウェアラブル端末は、将来的にそういうところを目指しているのです。
涙に含まれる血糖値を測れる、「スマートコンタクトレンズ」が実現しようとしています。そこから得たデータを無線でスマートフォンに送信し、状態を瞬時に確認できるというもの。つまりは、糖尿病の予防に役立つわけです。コンタクトレンズから情報を吸い上げるというような手法を受け入れるのか、それともどこかの段階で「気持ち悪い」と思うか、そのへんのところにいま興味があります。
アマゾンが本をより多く売るための斬新なシステムをつくったり、グーグルが広告出稿を促すために検索データを収集するなど、広告やマーケティングの世界ではさまざまなアイデアが用いられていますが、今後はだんだん、「自分よりも自分のことを知っているモノ」が増えていくことになります。
2015年02月20日
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【真鍋大度(まなべ・たいど)】
メディア・アーティスト。
東京オリンピック招致映像、Perfumeのライブ演出をはじめ、さまざまなジャンルでメディアアート作品を発表。世界から高く評価されています。
生体データによるアート表現など、身近な現象に最先端技術を組み合わせ、常に時代を先読みする表現を行っています。
経営・戦略2015年02月13日
5.0
マーケティング2014年10月24日
3.4
2015年02月13日
2015年02月06日
2015年01月23日
2015年01月16日