小規模なビール醸造所で品質を重視して造っている「クラフトビール」の人気が高まっている。こだわりの味が消費者に受け、醸造所の増設や新設が相次いでいる。キリンビールが出資したヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)が業界ダントツの生産量を誇るが、それに続くエチゴビール(新潟市西蒲区)や木内酒造(茨城県那珂市)などが年間3000キロリットル級の設備を整えつつあるほか、一挙に生産量を販売実績の5倍以上に引き上げる事例も出てきた。消費者を惹きつける“目玉”がほしい流通・外食業界から引き合いが殺到し、需要に供給が追いつかない状況になっている。
「継続的に設備を増強しており、年3000キロリットルの規模になる」
そう話すのは「常陸野ネスト」ブランドのクラフトビールを販売する木内酒造の木内敏之氏。コリアンダー、オレンジピールといったスパイスを加えた「ホワイトエール」などが人気だ。同社の昨年の年間販売量は約1400キロリットル(350ミリリットル缶で400万缶に相当)だったが、増える需要に追いつかず、今年1月に約2倍の規模に増やした。
同社は江戸時代の文政6(1823)年創業の造酒屋。平成5年の地ビール解禁の規制緩和を受けてビール製造に乗り出した地ビール・クラフトビール業界の老舗だ。
地ビール解禁で、4大ビールメーカー以外のビール製造会社が全国に誕生し、地ビールブームを巻き起こった。だが、醸造技術が未熟で品質を維持できなかったり、価格が高かったりしてブームが次第に沈静化。そんな中でも醸造技術に磨きをかけ、こだわりの味を追求するなどしたビール会社は生き残り、ここにきて「クラフトビール」の名前で再び人気に火が付いた格好だ。
木内酒造も当初から完全無菌の充填(じゅうてん)設備を導入するなど品質管理を徹底し、地ビールブームが過ぎた後も人気を維持。特にクラフトビールが急成長した米国など海外で高い評価を受け、現在は「海外販売比率が約5割」(木内氏)に達する。国内でも人気の高まりを受け、1月27日に東京・神田に小さな醸造設備を備えた直営店「常陸野ブルーイング・ラボ」を開設した。
同じく老舗のエチゴビールは、25年にそれまでの年間1900キロリットルから同2500キロリットルに生産設備を拡充した。さらに「今年4月までに排水処理設備を従来の1.5倍に増やす」(飯塚励社長)方針で、年3000キロリットル規模の生産にも対応可能とする。「(28年度)以降は増産態勢をとるつもり」(同)という。
copyright (c) 2015 Sankei Digital All rights reserved.
Facebookコメント