自ら代表を務める自民党支部への寄付が問題視されていた西川農水相が、安倍首相に辞表を提出、受理された。

 昨年の秋以降、辞任した閣僚は3人目だ。ただ、過去の2人のケースに比べ、首相の責任は二つの点でより重いと言わざるを得ない。

 ひとつは、安倍政権が成長戦略と位置づける環太平洋経済連携協定(TPP)を進める上で中心的な役割を果たした人物が、利害がからむ企業から不明朗な献金を受けていたこと。もうひとつは、疑惑発覚後の首相らの対応が極めて問題の多いものだった点だ。

 西川氏が代表の党支部は、政府がTPP交渉に初めて参加する直前の2013年7月、砂糖業者でつくる「精糖工業会」の関連会社「精糖工業会館」から100万円の寄付を受けた。

 自民党は当時、砂糖の原料をTPPでの関税撤廃の例外とする「重要5項目」のひとつと位置づけ、西川氏は党TPP対策委員長としてその聖域を守ると関係団体に訴えていた。

 また、精糖工業会は寄付の4カ月前に農水省所管事業の補助金交付が決まっていた。政治資金規正法は、補助金の交付決定通知から1年間の政治献金を禁じている。西川氏は同様に交付決定された地元の木材加工会社からの寄付も受けている。

 法には直接は触れなくとも、関連会社を経由させた手法は法の趣旨を逸脱している。寄付のタイミングと西川氏の言動を考えれば、利益誘導を疑われても仕方ない。

 首相らの対応も、理解しがたいものだった。

 首相らはいち早く「法律上は問題ない」と表明。また、首相は衆院予算委員会で民主党議員からの「ダミー会社を迂回(うかい)させた脱法献金だ」との指摘に対し、「日教組どうするの」とのヤジで応酬した。

 首相はヤジの意図について、日教組は補助金をもらっており、日教組が本部を置く日本教育会館から献金を受けている民主党議員がいるからだと翌日に説明していた。だが、事実ではないと民主党は主張。首相は「私の記憶違い」と訂正せざるを得なかった。

 当の西川氏も辞表提出後、「私がいくら説明しても、分からん人には分からないな」と開き直ったように語った。あまりにも誠実さに欠ける。

 昨年の衆院選で3分の2の与党勢力を確保して以来、政権のこうした態度は目にあまる。有権者からの信任を、はき違えていると言わざるを得ない。