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【野口裕之の軍事情勢】
中国の野望をくじく日本と台湾
ジョージ・ワシントン大学のロバート・サター教授も14年7月《台湾は中国にとり過敏な痛点で、米国にとっては中国に過大な代償を強いる選択肢》と看破。戦闘機売却や反中勢力のテコ入れで中国の対台湾戦略を難しくさせ、台湾制圧の軍事能力が不十分だと認識させる戦法を提案する。
米軍は、列島線上に陣取る同盟相手による対中バリケードの有効活用を前提に戦略・作戦を立案している。それを熟知する、グリナート提督と、過去30年歴代政権に信頼されてきた中国問題の権威サター氏は、台湾の不沈空母としての戦略的価値を説いたのだ。
フォーラムも《日本版・台湾関係法》の必要を強く訴える。背景には、台湾軍の兵器不足や出生率低下、災害出動増加など弱体化が横たわる。折良く日本政府は10日、新ODA(開発援助)大綱を閣議決定。軍の災害出動など非軍事分野や貧困国以外にも柔軟対処する方針だ。
ただ日本に、台湾支援が祖国の浮沈に直結する一大事だと反応できる政治家がどれほどいようか。中国は帝国主義を信奉する異形の大国だが、日本も帝国主義との決別に際し、主権国家の矜恃を葬った異形の国。だのに、両国とも異形という自覚がない。台湾を支援すれば、中国は“国内法”である反国家分裂法を口実に軍事・経済的恫喝を必ず仕掛けてくる。断固はねつける実力と胆力を持とう。
さもないと、異形どころか国の形まで失う。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)