[PR]

 高知県の室戸岬東海岸の定置網に鼻先の長い「ムツエラエイ」がかかった。エイの仲間で深海に住む珍魚で、捕獲例が少なく、生態はほとんどわかっていない。

 このエイが見付かったのは室戸岬町の三津大敷組合の定置網。17日、昼の水揚げ作業をしていて漁師が見付けた。船上からすぐに日本ウミガメ協議会室戸研究基地の渡辺紗綾さん(31)のところに連絡が入り、港に戻ったところで収容した。

 渡辺さんによるとエラ穴が普通のエイは5対なのに対して、6対あることから「ムツエラエイ」と呼ばれるといい、1属1種の珍種。インド洋から西太平洋にかけての水深120~1120メートルで採集された例があるという。

 長くて大きな鼻先は「吻(ふん)」と呼ばれ、ゼラチン質で柔軟。口は底にいる生物を捕食するのに適した形になっている。エイの中でも原始的な種類と言われ、オニイトマキエイ(マンタ)のように羽ばたくように泳ぐのではなく、側面を波打たせて泳ぐといわれる。

 今回のエイは体長66センチ。高知大の遠藤広光教授(魚類分類学)によると「日本では6個体目になるだろう。なぜ深海魚が定置網にかかったのかは分からない」と話す。

 「漁師さんの協力でいい状態で持ち帰ることができた。捕獲例が少なく、標本は国内でも数体しか報告されていない」と渡辺さん。今後は細部を計測した後、胃の内容物などを調べ、論文で報告するという。(根岸敦生)