ル・マン用GT-RはやっぱりFFか?
国沢光宏 | 自動車評論家
後輪をモーターで駆動しているかもしれない、と紹介したル・マン用(というかWEC用)のGT-Rだけれど、その後、取材を進めると、皆さんピュアなFFだという。「これ以上GT-Rに近い人は数少ないでしょうね」という人まで「本当にFFなんですよ」。
その際、判明したのは「GT-Rの性能について日産側で持っている情報が多くない」ということ。すでに報じられてるけれどWEC用GT-Rは昨年ル・マンで走らせた『デルタウイング』(三角形の電動レーシングカー)を作ったベン・ボウルビーが手がけている。デルタウイングを見て解る通り、相当な野心家。
どうやらNISMOはベン・ボウルビーのアピールを100%信じ、乗っかったらしい。以前「日産は新型GT-Rの性能に確信を持っている」と紹介した。私はリアに付いているドライブシャフトが駆動&回生用モーターに繋がっているように見えたので、日産らしいアバンギャルドなチャレンジだと評価した次第。
しかし純粋なFFと聞いた途端「大丈夫か?」。なにしろエンジン+モーター出力の合計は最大で1000馬力以上。いくらミシュランで専用構造のタイヤを開発しているといっても、シケインの立ち上がりで厳しい。立ち上がり加速はタイムに大きな影響を与える。実際、前述の「相当近い人」は「厳しいと思います」。
続けて意外なことを言い始めた。「もしかしたら全く戦えない可能性もあります」。NISMOがベン・ボウルビーのセールストークを100%信じたかもしれない、ということである。そんなことは考えたくないけれど、日産の皆さんも疑い始めていることだけ知っておいて頂きたい。
2月28日に新型GT-Rが日本でもお披露目となる。その時にリアのドライブシャフトの謎と合わせ、ある程度の情報をお届けできると思う。
トヨタはWRCに。ホンダがF1。そして日産もル・マンにカムバックする。現時点で全て「万全」と言いがたい状況。ただスタートから順風満帆より応援のしがいはあるというもの。今シーズンは楽しめると思う。