配信者INTERVIEW
横 山 緑
暗黒放送という新しい世界
文・写真/福田信哉
今回のゲストは横山緑さん。ここでひとつ説明しますと、これからたくさん出てくる「生主」という言葉、これは主にニコニコ生放送で放送を行うパーソナリティの事。そして、「リスナー」。これは放送を見ているユーザー、特に放送にコメントを書く人の事。
なぜこれを冒頭に持って来たかと言うと、生主は不明だが、リスナーという呼称は今回の横山緑さんが好んで使っていたことから現在も使われる単語として定着したものだと筆者は睨んでいるからだ。(だって動画なのにリスナーってなんか変)
横山緑さんは全生主中でコミュニティ参加人数ナンバーワンを記録した暗黒放送を主催するベテラン配信者。暗黒放送は「笑い禁止」「馴れ合い禁止」「放送主の出会い禁止」「乞食禁止」を掲げ、自虐的で他虐的、明るい話題は一切ない文字通りの暗黒の放送と謳っている。
しかし、そのモニターの暗黒部分を見つめ続けるうちにリスナーはあることに気付かされる、ここにあるのは暗黒という空洞ではなく、一人の男を通して見る、新しい世界だ。
編集(以下、編) では、まずはざっくばらんに生い立ちから
横山緑(以下、緑) 生い立ちですか、産まれた時からですか?
編 まぁ(笑)覚えてる範囲で
緑 そうですねぇ、小学校の時は人としゃべってたんですけど、中学校に入ったら全然しゃべらなくなって、どんどん一人の世界に入るようになりまして
編 それは物心がついたからですか?
緑 そーですね。思春期の手違いで
編 なんかこれっていうきっかけがあったんですか?
緑 きっかけというか気付いたら自意識過剰になっちゃって、小学の時から急に変貌を遂げたんですよね、RPGツクールで自分で作ったゲームを自分でやったりだとか。それでまぁ、学生の時はほとんどラジオですね。深夜はずーっとラジオ聞いて、ハガキ書いて投稿したりして
編 ハガキ職人だったんですか?
緑 そうですね。高校の時から社会人になるまでずーっと。
編 具体的に番組とかはどういうものを?
緑 オールナイトニッポンと、声優とかが声を充ててるような全盛期にアニラジって呼ばれてた文化放送系のラジオですね。ペンネーム言うと多分バレちゃう。かなりの常連だったんで。三千枚くらい書いてますから
編 すごいですね(笑)やっぱりそれは読まれたいっていうのが動機で?
緑 そうですね。だから、自分のハガキが読まれたらそれを録音しておいて、後で何回も繰り返し繰り返し聞くっていう
編 (笑)自分のハガキが全国に流れるわけですもんね。それは何か現在の配信に通じるものがありますね
緑 そうですね。だから、それが暗黒の原点になってると思いますよ。リスナー側の気持ちに立ってどう考えるかって部分が、放送のスタイルになってますね
編 その送ってたものは全部ネタ投稿?
緑 そう。だから、駄洒落とかのネタを授業中に思いつくだけノートに書いて、家に帰ってハガキに清書するっていう
編 じゃあ、全然勉強してないですね(笑)
緑 勉強してないですね。ぼく地方でも最悪の一番偏差値の低い高校でしたもん。男子校でヤンキー多かったですよ。一応私立だったんですけど、まぁ、弱かったですね。しかもそこしか受けれなかったという、もう、そこ一本で。高校がぼくの人生で一番暗黒でしたね。誰とも話さないで、休み時間も自分の席で寝たフリして、ぼくの悪口を言ってないか監視するんですよ、それで誰かぼくの悪口を言ってたら、うわぐつにガム仕掛けたり、自転車にネリ飴を仕掛けたり、陰湿な男でしたね。しかもすぐやるとバレるんで、2、3日置いてから地味に精神的ダメージを与えるという
編 (笑)確かにいましたね、友達1人もいないのにいつでも居るやつ
緑 だって、ぼく学校休むと悪口言われるんで、それが嫌で皆勤賞でしたからね。しかも自分の席を離れると、席に誰か座られるのも嫌なんで、ずーっとそこに居続けるという。それで誰とも口を聞かずにそのままスーっと卒業しましたよ
編 では、やっぱり思春期には避けて通れないと思うんでけど、性の芽生えなんかはどこらへんだったんですか?
緑 なんすかねぇ。これ絶対みんな嘘だって言うんですけど、高校までそういったことを知らなかったんですよ。で、高校生になってから、当時の11PMとかギルガメッシュナイトを録画して、親が寝た深夜にリモコンのジョグをコリコリコリコリッてやって見てたんですよ。後は、自分で買いに行くのが恥ずかしくてできなかったんで、山でエロ本を拾って来て、コタツの中で暖めてから開封するって技を編み出したり
編 濡れたまま開くと破けちゃいますもんね(笑)でも、高校以前の沸き上がる性欲はどうやって解消してたんです?
緑 高校以前は…、そうだ、それはバッティングセンターで解消してたんですよ! これは放送でも話したんですけど。後は本当、夢精しかしなかったですけど。だってその当時は結婚するまで童貞を捨てないって誓ってましたもん。
編 じゃあ、遊んでる同級生とかを恨んでたり?
緑 そういうのはなかったですね。ないというか、自分とは無関係の世界だと思ってたんで他人に対する嫉妬とかはなくて、完全に自分の世界に閉じこもってたんですよ。ラジオにしか興味を示さなくて、他人との繋がりがハガキとラジオしかなかったんですよ。それ以外にはなんにも興味がなかったんですよ。
編 それで高校を卒業して…
緑 そこから写真の専門学校に行ったんですね。それはただ働きたくないってだけの理由で、写真とか興味なかったのに。で、そこでも友達もひとりもできず、誰とも話さずでほとんど高校の時と変わらなかったですね。でも最後の卒業制作みたいな作品の人気投票でドス黒い作品が受けて最優秀賞取れたんですよ。それで就職が有利になったんです。
編 (笑)それはすごいですね
緑 で、就職した先を1ヶ月でクビになりまして。その理由が日曜日に掃除に来いって言われてたのをサボったってことと、タイムカードの押し方が分からなかった
編 やっぱり社会性の無さが(笑)5年間誰とも話さなかったというブランクは大きかったですね
緑 大きかったですね。で、未だに忘れられないんですけど、そのクビになった日、ぼくの机の上にあんぱんが一個ぽつん、と置かれてて
編 (笑)え!? どういう意味で?
緑 分かんないんですけど、でもその仕返しに帰り際、駐車場に停まってた会社の車のフロントガラスに唾をビシャーって吐き付けてやりましたよ
編 (笑)
緑 それから、卒業した専門学校にもう一回頼りに行って、別の就職先を斡旋してもらって、そこは1年半くらい持ったんです。印刷会社なんですけど、ただ、ずっと仲は悪かったですね。だだっ広いフロアにぼくと上司のふたりだけですから。そこも最後辞める時は専務呼ばれて、その上司と取っ組み合いですよ。お互い胸ぐら掴んで、お互い溜まってたものが爆発したんでしょうね。で、そっからが問題だったんですけど、2日経ってから腹が立ってもう眠れなくなって、次の日の朝礼の時間を見計らってその上司の靴の中にデカビタCを突っ込んだり。靴隠したりを2日間くらい
編 高校と変わんないじゃないですか(笑)陰湿な
緑 まだ、そん時は尖ったナイフでしたから。やることないんで深夜ひとりで家のまわりを徘徊とかしてましたし。それから半年、失業保険をもらって、アダルトの業界に入ったんです。最初は普通のカメラアシスタント募集ってのに応募して普通の会社だと思ってたんですけど。で、エロビデオのADみたいなことをやったんです。でも、その会社に入ったおかげで色々鍛えられましたね。女とも話せるようになったし。
編 それから、女性と話せるようになって、彼女とか出来たんですか?
緑 彼女が出来るのは東京に来てからですね。それは、前のアダルトの会社を辞めるきっかけだったんですけど、ピンクローター有坂っていう元V&R※で撮ってた監督にスカウトされて、石神井公園のその人の家に居候し出したんですね。そのピンローさんとピンローさんのおばあちゃんと3人で
※注:V&R-(V&Rプランニング)美少女アダルトビデオ全盛時代にレイプ、スカトロなどのフェチAVや、ドキュメンタリー手法を用いた主流と一線を画す作品で人気を得たビデオメーカー
編 (笑)それは実のおばあちゃんですか?
緑 そうそう。それでぼくの仕事がそのおばあちゃんのご飯を作ったり、おばあちゃんを病院に送って行ったりっていうのが一日の仕事でした。だから今までと比べたら天国みたいに楽でしたよ。そんでその後、その家が木造一軒家だったんですけど、社長が2階にスカキャバってスカトロキャバレーっていうクラブを開いて、ぼくが1階でおばあちゃんと飯食ってると、そこにお客さんがうんこまみれで風呂入りに来たり。で、仕事と家庭が一緒になっちゃって皆おかしくなってたんですね
編 えーー(笑)
緑 それで最初はよかったんですけど、だんだんAVが何にも売れなくなりまして、給料が3ヶ月未払いになったんでそこを辞めて、独り立ちすることになるんです。それも最初はひとりでやっていくにはギリギリなんとかなってるような状態で、その状態で1年半くらいしてニコ生をはじめる。と。
※ニコニコ動画にアーカイブの残る最古の暗黒放送