離婚
24 11月 2014, Posted by in 離婚離婚の種類と流れ
離婚調停のお悩み
【ご質問】
私は45歳の女性です。年収は800万円です。結婚20年になりますが、夫と喧嘩が絶えず10年前から別居しています。夫は収入が少なく生活費は払えないということです。離婚して欲しいと言ったのですが夫は「離婚には応じられない」の1点張りです。目立った財産はありません。なお、夫の間に子どもはいません。どうしたらいいでしょうか?
[弁護士からのアドバイス]夫に離婚を申し入れても話し合いができない場合は家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てることになります。離婚調停は調停申立書を家庭裁判所に提出して行います。離婚調停では、調停委員が夫婦双方の意見を聞きながら、合意に達するよう説得してくれます。離婚調停をやっても夫が離婚に応じない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を起こします。10年間別居していれば離婚の判決が出るのが通常です。
離婚にあたって問題になるのは財産分与、慰謝料ですが、目だった財産がないため財産分与の問題は特に生じません。慰謝料については、あなたが精神的苦痛を受けているのであれば、それに見合った額の請求はできます。ただ、夫が離婚を頑なに拒んでいるわけですから、夫を説得して離婚に応じてもらうのが先決で、慰謝料は断念しなければならない場合もあります。
離婚成立前に考えなければならない点がひとつあります。婚姻費用(生活費)の問題です。夫と妻どちらがいくらの金額を負担するかは夫婦の年収を基準に決められます。あなたの年収が800万円で、夫の年収が少ないのであれば、夫に生活費の支払を求めることは難しい。逆に、夫から生活費を請求された場合は、あなたから別居中の夫に対して離婚成立までの期間、毎月相応の生活費を支払わなければならない場合もあります。
調停のお悩み
【ご質問】
45歳の女性です。夫のDVで離婚を決意しました。今は別居しています。離婚調停はどこの裁判所に申し立てるのでしょうか。夫が住んでいる地域の裁判所には行くことになるのでしょうか?また、どの裁判所で調停するにしても、夫と遭遇するのは怖くてなりません。控室はお互い別らしいですが、前回の調停の後、夫が家裁の玄関で待ち伏せしていたようです。怖くてたまらないのですが。
【弁護士からのアドバイス】
離婚調停は、調停の相手方、すなわち夫の現住所を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります(家事事件手続法245条)。夫が神奈川県川崎市に住んでいる場合には、横浜家庭裁判所川崎支部に申し立てます。あなたが、夫が住んでいる地域にはもう2度と行きたくもない、というのであれば、夫の同意を得て、別の家庭裁判所に申し立てることは可能です(家事事件手続法245条)。ただ、この方法は、東京都に事務所のある弁護士に代理人になってもらわないとやりにくいと思います。
次に、特にDVの場合は家庭裁判所で夫と遭遇するのは危険です。そこで、裁判所にDVがあること、夫と遭遇しないよう配慮して欲しいことを事前に伝えておいて下さい。伝える方法としては、東京家庭裁判所に申し立てる場合は、家庭裁判所から「進行に関する照会回答書」に記入して提出するよう指示されます。東京家庭裁判所以外の家庭裁判所では裁判所によって異なります。いずれにせよ、家庭裁判所に伝えておけば、呼出時刻をずらす、妻側を先に帰すことによって夫による待ち伏せを阻止するなどの配慮をしてくれます。
離婚 親権のお悩み
【ご質問】
30歳の女性です。幼児が3人います。夫は最近ほとんど外泊です。先日、夫が依頼した弁護士から「あなたが子どもの面倒を十分見ていない証拠写真がある。調停を起こせば父親が親権者になり、慰謝料も請求できるが、協議離婚なら慰謝料はとらない」と言われました。こんな話ってあるんですか?
【池内ひろ美からのアドバイス】
幼児を抱えて離婚した場合はほぼ例外なく母親が親権者となります。かなり強引な弁護士なのであなたも弁護士を立てて対抗した方がいいと思います。
【弁護士からのアドバイス】
相手方の弁護士の言うことを真に受けて、自分だけの判断で行動を起こすことは得策ではありません。弁護士の中にはあなたの弱味と無知に付け込んで自己の依頼者に有利な解決を図ろうとする弁護士もいるのです。子どもの面倒を十分見ていないと思われるのではないか、その証拠写真を裁判所に出されたらそれがすべてだと思われてしまうのではないか、といった心理をうまく利用される場合があります。
親権のお悩み
【ご質問】
40歳の女性です。夫婦仲は冷え切っています。こちらから離婚調停を申し立てたのですが、夫は12歳になる娘の親権を主張し離婚に応じません。どうしたらいいでしょうか。
【弁護士からのアドバイス】
まず、親権という言葉の意味を確認しましょう。親権とは、子どもに対する監護教育と財産上の管理処分を行う権利・義務のことです。親「権」といいますが、権利だけではなく、義務でもあります。
そして、監護教育とは、要するに、子どもを育てることです。一緒に暮らし、衣食住を与え、学校に通わせる等することです。親権の内の、この監護教育に関する部分を、監護権ともいいます。一方、財産上の管理処分とは、文字通り、子どもの財産を管理することです。
父母が婚姻している間は、父母が共同して親権を行使しますが、離婚する際には、父母のどちらかを親権者として決めなければなりません。親権者は、調停での話し合いの中で、父母が協議して決めることができます。協議がまとまらない場合は、裁判の中で、家庭裁判所が決定します。
親権者を定める際、親権者と監護権者は一致させることが原則です。しかし、例外的に、親権者と監護権者を別々の者にすることもあります。たとえば、子どもがまだ幼く、子どもを育てるのは母親の方がよいが、母親には浪費癖がある等財産管理に問題があるような場合です。このような場合、父親を親権者として、母親を監護権者とすることがあります。
あなたの場合、夫が親権を主張して離婚に応じないとのことですが、統計ではおよそ9割のケースで、母親が親権者となっています。あなたの方が有利なのですから、あせらず落ち着いて話し合いを行って下さい。
親権のお悩み
【ご質問】
38歳の女性です。母に強く促されて娘2人(10歳、6歳)と実家に帰りました。しかし母は病気がち、私は仕事に追われています。娘は夫と会いたがっています。夫は義母と同居しており、私は、子どものことを考えると、離婚に際し娘の親権を夫に譲ってもいいとも思います。そういうのは可能ですか?
【弁護士からのアドバイス】
平成24年度の司法統計によれば、調停又は審判で離婚した夫婦のうち、妻が親権者となったのは1万9161件、夫が親権者となったのは2033件でした。約9割のケースで妻が親権者ということになります。妻が親権者となるケースが多いことは確かです。
しかし、夫と妻のどちらが親権者となるかは、子の福祉の観点、つまり子どもが健全に成長するために、どちらの元で暮らした方が良いのか、という点から決められます。必ずしも妻でなければならないというものではありません。だからこそ、1割のケースでは夫が親権者になっているのです。
あなたの場合、夫が義母と同居していて、おそらく義母が子育てを支援してくれるのでしょう。また、10歳前後であれば、子ども自身の意向も尊重されるのですが、あなたの娘も夫に会いたがっているということですから、その意思も尊重すべきです。これらの事情からすれば、夫が親権者となって子育てをすることに、支障はないでしょう。
もちろん、あなたが親権を主張すれば、あなたが親権者となることができる可能性もあります。しかし、今回の場合であれば、夫に親権を譲るというあなたの考えは十分理由があります。夫を親権者とする方向で協議・調停を進めて下さい。
ただ、1つ注意して欲しいのは、いくら娘さんが父親に会いたがっているからといって、親権を譲って引き渡してうまくいくとは限らないということです。どちらが親権者になるにせよ、面会交流の機会を十分確保したほうがいいでしょう。
親権のお悩み
【ご質問】
子供のためにも離婚は避けなければとずっと悩んできましたが、夫とこれ以上暮らしていく愛情が持てません。離婚したいと切り出したところ、「専業主婦のお前が子供を育てるだけのお金を稼げる訳もないし、親権は譲らない」と言われてしまいました。確かに仕事に就けたとしてもどれだけ稼げるが分かりません。夫が親権者になってしまうのでしょうか。(35歳 専業主婦)
【弁護士からのアドバイス】
まず、離婚の話合いが自分たちだけでまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てて離婚の話合いをすることが考えられます。調停は裁判所で第三者を交えて行う「話合い」なので、当事者が納得しなければ、調停の中で親権者を勝手に決められてしまうことはありません。話合いがまとまらなければ、離婚は成立せずに調停は終了することになります。そして、調停で離婚が成立しない場合は、離婚するために裁判をすることができます。裁判で離婚となる場合は、裁判所が親権者を決めます。
親権者を父親と母親のどちらにするかは、子どもが健全に成長するためにはどちらと暮らす方がよいか、という観点から判断されます。その判断では、親側、子ども側、様々な事情が考慮され、あなたの収入という経済的な事情だけで決まるものではありません。
まず、親側の事情としては、体力的、経済的に子どもを育てることができるか、子どもに対する愛情はどうか、これまでの子育ての実績はどうか等の事情が考慮されます。親だけで育てることが時間的・経済的に厳しくとも、実家の両親の支援があれば、それもプラスに考慮されます。
次に、子ども側の事情としては、10歳前後であれば子ども自身の意向も尊重しつつ、子どもが現在暮らしている環境にどれくらい馴染んでいるか、親権者の指定によって暮らしている場所が変わることになる場合、変化に対応できるか、等の事情が考慮されます。
離婚する夫婦のうち9割のケースで母親が親権者となっているのが実情です。弱気にならず、話合いを進めてください。
親権のお悩み
【ご質問】
度々の夫の浮気により離婚を決意しました。 10歳になる子どもがいます。
私自身収入もあるため、子供と二人で暮らしていくのには不自由しないと思います。 ところが夫が親権について全く譲る様子がありません。 夫婦間での話し合いでもう一年が経ってしまいました。 今後はどのようにして進めればいいでしょうか。 調停になった場合も夫がひたすら親権を主張し続けたら
どうなるのでしょうか。(40歳 会社員)
【弁護士からのアドバイス】
調停で親権の争いがあり、話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所調査官に関与してもらうことがあります。家庭裁判所調査官は、親権者を決める際に考慮すべき事情について、調査を行う人です。調査する事情は、子どもが父親と母親のどちらと暮らしたいかという意思や、現在子どもが育てられている状況、父親・母親それぞれにつき親権者としてふさわしいかどうか等です。
家庭裁判所調査官は、父親・母親から話を聞くだけでなく、たとえば現在子どもが母親の実家で暮らしているのであれば、実際に実家を訪問し、子どもや母親の両親から生活状況を聞くこともあります。また、子どもが通っている保育園を訪ねて、園長や担当の保育士から話を行くこともします。家庭裁判所調査官の調査結果は調査報告書としてまとめられ、調停の当事者もその内容を見ることができます。
そうとはいえ、調停はあくまで話合いですから、当事者の合意がなければ、親権者は決まりません。調査報告書はあくまで親権を決める際の参考資料となるものです。調査報告書を元に再度当事者同士で話し合い、それでも親権についてまとまらないこともあります。その場合は、調停で離婚することができませんから、調停は不成立として終了させ、後は離婚訴訟を起こすかどうか、選択することになります。
離婚 養育費のお悩み
【ご質問】
三年前に離婚しました。最初は二人の間で決めた養育費が支払われていたのですが、徐々に金額が少なくなって来ました。子供との面会も「いろいろ連れていくのにお金がかかるから」と嫌そうです。
最近では支払いのない月もあります。私は働いていますが養育費がないと子供のお稽古代等、生活費をかなり削らないといけません。元夫とはもう話をしたり連絡を取りたくないのですが、このままあきらめるしかないのでしょうか。(40歳 派遣社員)
【弁護士からのアドバイス】
調停で養育費の支払いを決めたのであれば、履行勧告、履行命令、強制執行という手段をとることができます。
まず、履行勧告とは、家庭裁判所から、元夫に対して、養育費を支払うように催促してもらう方法です。調停をした家庭裁判所に電話で履行勧告をしてほしいと伝えれば、家庭裁判所の調査官が対応してくれます。自分でも簡単に手続きができる上、手数料もかかりません。実際、履行勧告をうけて養育費を支払うケースはかなりあります。ただし、履行勧告に強制力はなく、無理やり支払いをさせることはできないので、確実ではありません。
二つめの履行命令は、家庭裁判所から、元夫に対して、養育費を支払うよう命じるものです。命令にもかかわらず養育費を支払わない場合、過料(罰金のようなもの)の制裁を受けますが、この制度は実際には効果が乏しくほとんど利用されていません。
最後の強制執行がもっとも確実性の高い方法でしょう。この方法は、養育費を夫婦間だけで決めた場合にも使えます。強制執行では、不動産や預金、給料等を差し押さえ、強制的に支払いをさせることができます。特に、給料を差し押さえれば、これまで支払ってもらっていない分の養育費を確保できるだけでなく、これから毎月、元夫の給料から養育費分が天引きされ、あなたの口座に直接振り込まれます。ただし、裁判所に強制執行の申立てをする必要があります。また、元夫が転職して勤務先がわからなくなくなった場合や元夫が自営業者の場合は給料差押はできません。
こういった場合には、間接強制執行を裁判所に申し立てることが考えられます。これは養育費を1日払わないと1日につき例えば1000円ずつ支払いが上乗せされるというものです。元夫としては日々支払が増えていくので
それを防ぐために養育費を払うだろうというものです。
手間や費用と効果を考えて、どの手続きにするか検討してください。
養育費のお悩み
【読者様からのご質問】
離婚した夫から養育費の使途の内訳を教えてくれと言われました。
教える義務はあるのでしょうか。(38歳 主婦)
離婚 養育費のお悩み
【読者様からのご質問】
離婚して5年が経ちました。子持ちの私も恋愛し、再婚することになりました。 連絡は取りたくないのですが、伝えないのもルール違反な気がして元夫にそのことを伝えました。
すると「再婚するんだからもう養育費を払う義務はない。一切払わない」と言われました。 そういうものなんですか?
元夫はどうやって自分の子供に対して責任を果たして行くのでしょうか。
(39歳 パート)
【弁護士からのアドバイス】
養育費とは、未成年の子どもが生活するために必要となる費用のことです。親は、子どもに対して扶養義務を負っていますから(民法877条1項)、養育費を負担する義務があります。離婚して、親権者でなくなったとしても、親と子の関係にあることには変わりませんので、やはり、養育費(子の監護に要する費用とも言います。)を負担する義務があります(民法766条1項)。
そして、あなた(養育費を受け取る側)が再婚した場合も、元夫(養育費を支払う側)は、子どもの親であることには変わりないので、引き続き、養育費を負担する義務を負います。再婚するから養育費を払う義務がなくなるということはありません。
ただし、あなたの再婚相手が、あなたと元夫との間の子どもを養子にした場合は、事情が変わってきます。子どもに対する扶養義務は、第一次的には養親が負うからです(民法818条2項、877条)。養子縁組があっても元夫は子どもの親であることに変わりなく、扶養義務を負いますが、再婚相手の収入が十分な場合、元夫が負担すべき養育費の額は減らすべきということになるかもしれません。その場合でも、元夫が勝手に減額することはできず、まずはあなたと元夫で話合いをして、まとまらなければ調停にということになるでしょう。
離婚のお悩み
【ご質問】
結婚して40年、子供は独立して家を出ました。結婚してまもなくから姑やご近所からいじめられ、寝たきりの舅の世話、夫からも家政婦扱い。離婚したかったのですが仕事に就く自信もなく「子供のため」とずっと我慢して来ました。やっと子供が独立しましたので、これからは自分の為に生きて行きたいと思います。離婚すると年金も分割できると聞いたことがありますし、今までの精神的苦痛を被った分の慰謝料と合わせて自分一人で暮らして行けると思うのですが、どうでしょうか。
【弁護士からのアドバイス】
まず、年金については、あなたの言うように、離婚の際、分割することができます。分割できる年金は、厚生年金・共済年金です。夫が自営業者の場合、厚生年金や共済年金はありませんから、年金分割はできませんので、注意して下さい。
年金分割の手続きを社会保険庁で行うと、年金額算出の基礎となる保険料納付記録が分割されます。分割の割合は、夫との合意で決めますが、最大で2分の1です(多くの場合2分の1で合意しています)。但し、平成20年4月1日以降、第3号被保険者(たとえば専業主婦)であった期間については、合意は不要で一律2分の1です。
次に、慰謝料についてです。夫婦の一方が結婚生活を破綻させるようなことをした結果、離婚せざるを得ない状態になってしまった場合、破綻の原因を作った夫(又は妻)は、相手に対して、離婚慰謝料を支払う必要があります。離婚慰謝料が認められるような破綻の原因は、たとえば、浮気(不貞行為といいます。)、一方的に家を出て行ってしまう、生活費を渡さない(これらを悪意の遺棄といいます。)、暴力、暴言等です。
あなたのケースでは、長年我慢してきた辛さはわかりますが、明らかに夫に破綻の原因がある、と言えるような事情はないようですから、訴訟で慰謝料をもらうことは難しいかもしれませんが話し合いや調停で慰謝料をもらえる可能性はあります。
参考文献:年金分割の考え方と実務
離婚のお悩み
【ご質問】
昨年夫が定年退職しました。一日ずっと二人きりで居る日々を送るなか、お互いイライラも募り喧嘩も増えてきました。
先日夫から「もう我慢できない。離婚しよう」と言われました。
浮気ではないようです。
今までずっと結婚生活を我慢してきたのは私です。切り出された離婚話に今更応じるつもりはありません。
どうしたらよいでしょうか。(62歳 主婦)
離婚 財産分与のお悩み
【ご質問】
50歳の女性です。夫婦仲がよくなく別居しています。離婚したいのですが、夫が間もなく定年で退職金が出ます。夫は「離婚するにしても、退職金を住宅ローンの支払いにあてたうえで、話し合う」と言っています。私としては、退職金をそのように使われるのは困ります。どうしたらいいでしょうか?
【池内ひろ美からのアドバイス】
裁判所に退職金の仮差押の申立てをして下さい。弁護士に依頼するのが無難です。仮差押命令が出れば退職金は会社にストックされます。そのうえで離婚の話し合いや調停をすればいいでしょう。
【弁護士からのアドバイス】
退職金が支払われてしまえば、夫がその退職金を使ってしまうことを止めることはできません。そこで、退職金の仮差押えを行って、会社から夫に退職金が支払われることをストップすることが考えられます。
仮差押えとは、相手にお金の支払いを求めようとしている場合に、交渉や法的手続きの間に相手の財産がなくなってしまうことを防ぐため、相手の財産を仮に差し押さえる手続きです。
あなたの場合、離婚するとなれば財産分与として夫にお金の支払いを求めることができますから、この仮差押えの手続きを利用することができるでしょう。退職金の仮差押えを行って、会社から夫に退職金が支払われないようにした上で、離婚の話合いや調停を進めて下さい。
ただし、仮差押えすることができる金額には限度があるので、注意が必要です。退職金の場合、4分の1までしか、仮差押えすることはできません。
また、仮差押えの申立てを行うには、保証金を納めなければなりません。保証金の額は、事案ごとに裁判所が決定しますが、財産分与に関係して退職金を仮差押えする場合には、仮差押えする退職金額の10%~15%となることが多いです。保証金を用意できなければ、仮差押えの手続きをすることはできません。
なお、仮差押えすることができる財産は、退職金だけではありません。土地建物や銀行預金、会社からの給料なども仮差押さえすることができます。
ただ、退職金の仮差押はあなたにとって心強い武器ですが、仮差押をすることによって、夫は勤務先に離婚話というプライバシーをさらされることになります。そのことで夫が恨みを抱き話がこじれる可能性もあります。
16.財産分与・・・これは「相続」なので3ではないでしょうか
義理の母が先日他界しました。
私は5年もの間義母の介護をしてきました。
夫は二人姉がいますが、介護を手伝ってくれたり
感謝の言葉をかけてくれることはありませんでした。
さらに義母が亡くなった時には、私の介護の仕方が悪かったせいにされました。
そんな義理の姉達には財産分与があるのでしょうが
私には何の話もありません。
自分があんなに頑張ったのに何も得られないというのは腑に落ちません。私は本当になんの権利もないのでしょうか。
(58歳 主婦)
L 亡くなった人が生前に所持していた財産は、相続によって、亡くなった人の家族のものになります。相続によって財産をもらう人(「相続人」といいます。)は法律で決まっており、亡くなった人の配偶者と子どもが第一順位の相続人となります(民法887条1項、890条)。亡くなった人の介護を手伝ったか否かは、相続人となるかどうかとは無関係なのです。
あなたの夫の母が亡くなった場合、亡くなった人の配偶者として夫の父が相続人になります。また、亡くなった人の子どもとして、あなたの夫とその姉二人も相続人となります。あなた自身は、夫の母親の子どもではありませんから、相続人とはなりません。残念ながら、このままでは夫の母の財産について、あなたに権利はありません。
このような状態を避けるためには、夫の母親が生きている間に、あなたとの間で養子縁組をする方法が考えられます。養子縁組をすれば、夫の母とあなたは法律上、親子の関係になりますから、夫の母が亡くなった際、あなたも相続人になります。
慰謝料のお悩み
【ご質問】
夫が独身女性と浮気しました。一時的なものと思っていたのですが結局その女性と別れる気はないと言われ離婚することになりました。慰謝料を請求したいのですがどのくらいもらえるものなのでしょうか。その女性の収入は契約社員で年収250万くらいだと思います。
(35歳 主婦 子ども一人)
【弁護士からのアドバイス】
世間一般では「浮気」と言いますが、法律の世界では、夫婦の一方が結婚相手以外の者と性的関係を持つことを「不貞行為」と言います。あなたの場合、不貞行為を行った夫とその相手の女性に対して、不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償請求として、慰謝料の支払いを求めることができます。
不貞行為の慰謝料は、裁判になると、100万円から300万円の間で認められることが多いようです。仮に、不貞行為によってあなたが受けた精神的苦痛が、金額にして300万円であると認められた場合、あなたは、夫と相手女性のそれぞれに対して、「合計で」300万円支払うように求めることができます。夫から100万円もらい、相手女性から200万円もらうということもできますし、相手女性だけから300万円もらうということもできます。
100万円から300万円という相場は、あくまで裁判になった場合のものです。話合いや調停であれば、慰謝料の金額は自分たちで決めることになりますから、交渉しだいで、もっと高い金額にも、低い金額にもなります。夫や相手女性がお金をたくさん持っている場合は、話合いや調停の方が良いでしょう。
なお、現在、夫や相手女性が不貞行為を認めていても、話合いで決着がつかずに裁判となった場合、不貞行為などなかったと白を切る可能性があります。そうなってくると、不貞行為があったことを証拠によって証明する必要があります。夫や相手女性が不貞行為を認めているうちに、書面に一筆書いてもらう等、不貞行為の証拠を確保しておくことが重要になります。
慰謝料のお悩み
【ご質問】
結婚して8年、子供はいません。共働きをしており職場の独身男性と恋愛関係になりました。夫と愛情のないまま結婚生活を続けていくよりも、今の彼と再婚し、新しい生活を始めたいと思っています。多分夫も浮気をしていますが証拠はありません。私から離婚を切り出した場合は、女性でも慰謝料を支払わなくてはいけないのでしょうか。またその額はどれくらいになりますか?
(38歳 会社員)
【弁護士からのアドバイス】
離婚に伴う慰謝料は、離婚を切り出した者ではなく、離婚の原因を作った者が支払わなければならないものです。たとえば、夫が浮気をして家から出て行ってしまったため、妻が離婚を求めた場合、離婚を切り出したのは妻ですが、離婚せざるを得ない状況を作り出したのは夫ですから、夫が慰謝料を支払わなければなりません。逆に言えば、妻が浮気をする等して離婚の原因を作った場合、離婚を切り出したのが夫であっても、妻が慰謝料を支払う必要があるということです。
あなたの場合、自分が浮気をしているということですから、離婚の原因があなたにあるとして、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。もちろん、夫も浮気をしているのであれば、離婚の原因は夫婦両方にあるということになるかもしれません。しかし、夫が浮気を否定する場合、あなたが夫の浮気を証明しなければなりませんが、証拠がないとなると、それも難しいでしょう。
また、離婚をしない場合でも、夫婦の片方が結婚相手以外の異性と性的関係を持った場合(これを「不貞行為」と言います。)、慰謝料を支払わなければなりません。浮気をしたあなただけでなく、浮気相手の男性も、慰謝料の支払義務があります。
不貞行為による慰謝料の額は、事案によって異なりますが、裁判になると、100万円~300万円の間になることが多いようです。
夫から慰謝料を求められるリスクを考えた上で、離婚を切り出すかどうか慎重に判断して下さい。
なお、以上は、あなたと夫の婚姻関係が破綻する前にあなたが不貞行為を行ったことを前提にしています。あなたが夫と別居等した後で不貞行為をした場合は慰謝料を支払う必要はありません(最高裁平成8年3月26日判決)。
離婚 その他(婚姻費用)のお悩み
【ご質問】
55歳の女性です。夫が浮気した挙句、離婚してくれと言ってきました。もちろん応じるつもりはありませんが、夫は自分が住宅ローンを払っていることなどを理由に生活費を渡しません。どうしたらいいでしょうか?
【池内ひろ美からのアドバイス】
弁護士に相談して家庭裁判所に「婚姻費用分担」の調停を申し立てます。そうすれば、裁判所が住宅ローンの点もふまえて生活費の支払につき調停してくれます。夫が額を争う場合は家庭裁判所が審判を下します。
【弁護士からのアドバイス】
夫婦が一緒に生活してくために必要な費用、つまり生活費のことを、法律上は、「婚姻費用」といいます。夫婦は、同居して、互いに助け合いながら生活する義務がありますから(民法752条)、婚姻費用を分担する義務があります。そのため、夫が生活費を渡さない場合、妻は、夫に対して、婚姻費用を支払うように請求することができます。夫が住宅ローンを支払っているからといって、生活費を負担しなくて良いことにはなりません。
具体的な方法としては、相手の住所地にある家庭裁判所に、婚姻費用分担請求調停の申立てを行うことになります。調停は、家庭裁判所の中にある調停室で、調停委員という人に間に入ってもらい、相手との話合いをする手続きです。ただし、あくまで話合いなので、夫と妻の両方が納得しなければまとまりません。
調停で金額がまとまらない場合は、自動的に、審判という手続きに移行します。審判では、審判官(裁判官のようなものです。)が、生活費として支払うべき婚姻費用の額を決定します。
実際上は、平成15年に公表された「婚姻費用算定表」に従って決定されています。「婚姻費用算定表」は夫の年収、妻の年収、子どもの年齢、数で大体の婚姻費用を決めるものです。夫が住宅ローンを支払っている場合に、その支払額を年収から差し引くかについて問題ですが、婚姻費用算定表から算出された分担額より若干減らすのが通常です。
参考審判:さいたま家裁平成25年(家)第30446号
離婚 ハーグ条約のお悩み
【ご質問】
40歳の女性です。アメリカ人と結婚し、アメリカで出産して暮らしてきましたが、夫と性格が合わず、娘(16歳)を連れて、日本に戻ってきています。ハーグ条約で夫が娘を連れ戻すことが認められるのでしょうか?
【弁護士からのアドバイス】
2014年4月1日から、ハーグ条約実施法が施行されました(正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」と言います。)。ハーグ条約実施法が施行されたことにより、海外から日本に子どもを連れて行かれてしまった親は、子どもを元々住んでいた国に返還するように求めて、日本の家庭裁判所に申立てを行うことができるようになりました。
子どもの返還申立てがなされると、裁判所において審理が行われます。審理の中で、返還を求める親は4つの「返還事由」が存在することを証明することになります。返還事由は次の4つです(ハーグ条約実施法27条1号から4号)。これら4つの返還事由の存在が認められた場合、原則として返還命令が下されることになります(例外はQ22参照)。
1.子どもが16歳に達していないこと
2.子どもが日本国内に所在していること
3.常居所地国の法令によれば、当該連れ去り又は留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること
4.連れ去りの時又は留置の開始の時に、常居所地国が条約締結国であったこと
(常居所地国とは、子どもが元々暮らしていた国のことです。)
今回のケースでは、あなたの娘さんの年齢が16歳ということですので、返還事由1が認められません。そのため、あなたの夫が家庭裁判所に申立てを行っても、あなたの娘が連れ戻されることはありません。
離婚 ハーグ条約のお悩み
【ご質問】
35歳の女性です。カナダ人の男性と結婚し3歳の息子がいます。実は先月、夫と喧嘩し、息子を連れて日本に帰国し実家に身を寄せています。このままずっと平穏に暮らしていても、夫が息子の返還を求めてくれば、息子を引き渡さなければならないのですか?
【弁護士からのアドバイス】
2014年4月1日から、ハーグ条約実施法が施行されました(正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」と言います。)。ハーグ条約実施法が施行されたことにより、海外から日本に子どもを連れて行かれてしまった親は、子どもを元々住んでいた国に返還するように求めて、日本の裁判所に申立てを行うことができるようになりました。子どもの返還申立てがなされると、裁判所において審理が行われます。審理の中で、4つの「返還事由」の存在が認められれば、原則として返還命令が下されることになります(返還事由についてはQ21参照)。
ただし、返還事由が存在する場合であっても、「返還拒否事由」が1つでも存在する場合、返還命令が下されない可能性があります。返還拒否事由は、次の6つです(ハーグ条約実施法28条1項本文)。
1.申立てが連れ去りの時又は留置の開始時から1年を経過した後になされたものであり、かつ、子が(裁判時に)新たな環境に適応していること
2.申立人が連れ去りの時又は留置の開始時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと
3.申立人が連れ去りの前もしくは留置の開始前にこれに同意し、又は連れ去りの後もしくは留置の開始後にこれを承諾したこと
4.常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること
5.子の年齢および発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること
6.常居所地国に子を返還することが日本国における人権および基本的人権の保護に関する基本原則により認められないものであること
(常居所地国とは、子どもが元々暮らしていた国のことです。)
今回のケースでは、DVがあったということですから、返還拒否事由4が認められる可能性があります。
また、あなたが子ども一緒にこのまま平穏に暮らして1年が経過すれば、返還拒否事由1が認められる可能性もあるでしょう。
離婚(面会交流)のお悩み
【ご質問】
離婚に際し、月一回の面会交流を取り決めました。ところが最近元夫は「いろんなところに連れて行くのにお金がかかるから」と嫌がります。どうしたらよいでしょうか。
(33歳 10歳息子 8歳娘)
【弁護士からのアドバイス】
お金がかかるから面会交流したくないというのもおかしな話です。子どもに、面会交流の状況をよく聞いて、なぜお金がかかっているか考え、お金がかからない面会交流の方法を元夫に提案することがまず考えられます。
そのように元夫に提案しても、相変わらず元夫が同じような理由で面会交流したがらない場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てるといいでしょう(民法766条2項)。調停で、元夫が面会交流を拒否している理由を調停委員に聞いてもらい、それが、生活状況の変化により、月1回子どもを連れて外出するようなお金の余裕がない、というものであれば、調停で現在の生活にあった面会交流の方法を決めるといいでしょう。
なお、離婚調停で面会交流を決めたのに元夫が守らないという場合は、家庭裁判所に履行勧告してもらう方法があります。これは、家庭裁判所から元夫に約束を守るように指導してもらうものです。
離婚(面会交流)のお悩み
【ご質問】
月1回の面会交流の日に、元夫は自分の家に子供を留守番させて、何時間か出かけてしまうことがあるようです。それでも子供は元夫と会うのを楽しみにしています。そんな元夫でも、子供が会いたがる限り面会交流は続けたほうがよいのでしょうか。
(35歳 子供9歳娘、7歳娘)
【弁護士からのアドバイス】
元夫が、面会交流中に子どもに留守番させて何時間も出かけてしまう、というのは面会交流の目的に反します。しかし、子どもが元夫と会うのを楽しみにしている以上、
ただちに、面会交流を打ち切るのは妥当ではありません。まず、元夫に子どもの希望を伝え、面会交流で十分触れ合いの時間をもつよう求めるべきでしょう。
それでも改善がみられない場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立 てる方法があります。調停委員に、元夫が面会交流の日に子どもに何時間も留守番させているという実情を伝え、面会交流中には子どもと十分触れ合うようにする、それが守られない場合は面会交流を停止することができる、といった調停条項を作ってもらうのです。