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【私説・論説室から】

不登校をゼロにするには

 段差に出くわして戸惑っている車いす。そんな光景を思い浮かべて、どう考えるか。

 足腰の不自由は個人の責任。動くことができるようリハビリを重ねて克服するほかない。この考え方は「医学モデル」と呼ばれ、人を環境に適応させようとする発想である。

 これに対して、段差を造った社会の側に責任があるとする考え方を「社会モデル」と呼ぶ。例えばスロープを設けて、環境を人に適合させようという立場を取る。

 「医学モデル」に偏った世界の中で、障害者は長らく苦しんできた。そこで「社会モデル」を真ん中にすえて、社会の変革を迫る障害者権利条約が定められ、日本も批准した。

 その理念は、障害者にとどまらず困難を抱える人を広く支えるうえでヒントになる。

 不登校の小中学生が十万人を上回ってすでに久しい。この間、文部科学省をはじめ教育界が進めてきた対策は、学校へ復帰できるようリハビリを促すものばかり。失敗は明らかだ。変わるべきは学校の方だろう。

 一筋の希望を感じさせてくれたのは、東京で封切られたドキュメンタリー映画「みんなの学校」。大阪市立大空小学校が舞台だ。

 落ち着きのない子や意思疎通の苦手な子…、みんなが同じ教室で学ぶ。「自分と違う」を認め合い、助け合う営みが不登校をゼロにする。むしろ、周りの子や先生たちの成長ぶりが鮮やかに伝わってくるのだ。 (大西隆)

 

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