電子図書館:広がるか…24時間貸し出し、自動で「返却」
毎日新聞 2015年02月23日 11時05分(最終更新 02月23日 11時59分)
スマートフォンやタブレット端末で手軽に読める電子書籍を貸し出す公立図書館が増えている。今年度は実証実験2館を含め10館でサービスが始まり、全国で33館になった。品ぞろえの充実など「電子図書館」の普及に向けた試行錯誤が続いている。【丸山進】
◇新刊少なく 著作権料が壁
茨城県の筑西市立図書館が電子書籍の貸し出しを始めたのは昨年10月。中学・高校生に読んでもらいたいと夏目漱石やシェークスピアなどをそろえたほか、生活実用書、県内旅行ガイド計約3400冊を用意。「開館前から問い合わせが多く、関心の高さを感じた」と藤川泰裕副館長。開館から約3カ月で、事前予想を上回る延べ400冊を貸し出した。
電子図書館は、電子端末を通じて電子書籍を借りて読めるサービス。利用者番号と暗証番号を図書館に登録しておき、自宅などからサービス提供業者のサーバーに接続して閲覧する方式が多い。期限が来れば自動的に「返却」され、貸し出し中なら借りられないのが一般的。24時間利用可能で、図書館側は紛失や破損を防ぎ、省スペース化も図れる。
2007年に国内初の電子図書館を開いた東京都千代田区立図書館は、昨年7月から絵が動き音声も流れる電子絵本が読めるタブレット端末を一部の分館で貸し出している。利用は館内だけだが、子供に人気だ。
群馬県明和町立図書館の電子図書サービスでは手塚治虫の漫画全集400巻が読める。山口県の萩市立図書館では語学や資格試験の学習の本など約2000冊をそろえるなど、特色を出している。
ただ、いずれも話題のベストセラーや新刊本は少ない。公立図書館は専門業者から電子書籍を購入しているが、元々、提供リストに売れ筋はほとんど入っていない。紙の本の売り上げへの影響を懸念し、出版社が卸さないからだ。紙の本は貸し出しに著作権者の許諾がいらないが、電子書籍は著作権の使用料がかかり、予算面のハードルも高い。