「民間税調(税制調査会)」が発足した。納税やそれに伴う紛争にかかわる税理士や弁護士、税制を研究する税財政分野の学者らのほか、一般の市民にも門戸を開き、皆で議論しながらあるべき税制を考えようという珍しい組織である。

 今月上旬の初会合で決めた設立宣言では、真っ先に「格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制と財政支出」を掲げた。

 中心となる5人は、民主党の元国会議員をはじめ、同党の政権時に政策づくりに加わった人が多い。その主張もあいまって「民主党の別動隊」といった声が聞こえてきそうだが、ここは一般市民の参加を求める姿勢、言わば「モノ言う納税者」を促すことの意義を考えたい。

 税制改革は、財務省が選んだ「有識者」からなる政府の税制調査会が理論面を検討し、与党、とりわけ自民党の税制調査会が財務省とやりとりしつつ具体案を決める。その主役は、力の衰えをささやかれながらも、税制通を自任する一部のベテラン議員だ。肝心の納税者は蚊帳の外と言っても過言ではない。

 もちろん、議会制民主主義・議院内閣制のもとでは、国民の多数の支持を得た与党と内閣が税制を決め、選挙を通じて審判を仰ぐのが基本だが、納税者の影があまりに薄い。

 納税者側に「税金を取られる」意識ばかりが強まり、「税金を納め、国や自治体に必要なサービスをさせる」という、主権者としての意識が乏しいのも、そんな税制の決定過程が一因と言えまいか。

 納税者の「被害者」意識は、財政のあり方に影響する。

 税金を取られるという感覚では、負担と給付を一体で考えることは期待できず、「負担は少なく、給付は多く」となりがちだ。そこに選挙での勝利を最優先する政治家の姿勢が重なるとどうなるか。国の借金総額が1千兆円を超えた財政難の、根っこにある構図である。

 そんな状況を、「モノ言う納税者」への試みを通じて改めていけないか。

 税制についてどんどん声をあげる。負担と給付の全体に目を光らせ、政府・与党が決めた税制や予算に点数を付けつつ、新たな注文を出す。そんな循環を作りたい。

 民間税調の中心メンバー5人の間では、消費税率の10%超への引き上げの是非など、一致しない点もあるようだ。そうした違いを隠さず、一般の参加者も交えて意見を戦わせてほしい。

 徹底的な議論こそが「モノ言う納税者」への出発点である。