最近効き出してきたツボ
1月28日の規制改革会議の議事録がアップされています。
松浦民恵さんと小林良暢さんがプレゼンしてるのですが、小林さんのはやはりというか小林節が炸裂していまして、これは必読です。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150128/gijiroku0128.pdf
小林さんは連合ができたときに電機労連から連合総研に出向して、8年間やったけど働き方改革はできなかった。
・・・連合は一体何をしてきたんだろうかということを最近ずっと考えております。
で、3つの課題というわけですが、このあたりのしゃべりが何とも小林節です。
第1の課題は、すぐできる「働き方」の「改革」をすることです。もともと何でこんな働き方をしているのか、これを変えるにはどこかツボがあるはずだ。ツボだけ押さえてやれば、少しは前へ進むだろうということを一つお話します。
しかし、ツボだけでは、マッサージに行っても次の日になると元の木阿弥ですから、第2の課題は、どこか根本的に体に異常がある場合にはそれを治さなければいけないということで、一体何が阻害要因か。やはり政労使の合意形成の在り方が、今、機能不全をきたしているということをお話します。
第3の課題は、それを突破して日本型の政策決定システムの枠組みを変えることによって新しい働き方を実現していくにはどうすべきかというお話をさせていただきます。
で、その第1の『ツボ』ですが、
1つめの提言は、「上限規制」をきちんと設けることです。労働時間短縮といってもなかなか進みません。これも連合は25年掛かっても進まないというわけです。・・・ただ、これは「青天井」の長時間労働を強いるものだと、連合とか労働組合は批判していますが、実は、これは現場の労使協議で、労使が合意して労働局に申請を出しております。この36協定というのは労使合意済みなんです。青天井だと言っても自分たちが結んだ協定に基づいてやっているんだということですが、これが直らないというわけです。
そう、労働組合サイドが長時間労働批判をするときの最大の急所は、(過半数組合のない事業所は別にして)その長時間労働とはまさに労働組合が認めてやらせているものであるという点なんですね。ただ、、それは、
しかし、現場を回ってみますと、意外に最近効き出してきたツボが1つあるということが分かってきました。それは何か。過労死認定基準の効果が徐々に出てきていて、かつては900時間とか1,000時間とか1,100時間の協定であったものが、だんだんと800時間くらいのところに下がってきた。この基準を下げてやれば、あるいは何らかの形でここの要素を使ってそれを下げていけば突破できる。連合の言っている年間300時間というのは、やや「絵空事」の感がありますので、とりあえずは年間700時間くらいに押さえて600時間へ持っていくということが可能ではないか。
自分らが現場で過労死認定基準を超えるような36協定を結んでいて、長時間労働になるから云々といっても絵空事に聞こえるのは当然なので、それでも大変長時間労働に変わりはないとはいえ、まあこういうレベルから始めるしかないのでしょう。
こういう調子で小林節が全開で進みますが、一点だけ小林さんが誤解されているらしい点を指摘しておきますと、
3つ目は、これは様々な議論も出されているところなので、これを是非、「休息時間11時間」という制度を導入すべきではないかというわけであります。
付け加えますと、EUの休息時間には、オプトアウト条項というものが必ず付いています。
オプトアウトというのは、EU労働時間指令における(時間外を含めて)週48時間規制を、個人の雇用契約ベースで適用除外する制度のことをいうので、それ以外の休息時間等の規制についての特例措置は「オプトアウト」とはいいません。なぜならそれらは、業務や職種で指令上既に規定されているからで、個人の意思で勝手に出たり入ったりできるものではないからです。
まずいのは、この後の質疑応答で、佐々木かおり氏が
○佐久間委員 ありがとうございます。小林所長にお伺いしたいんですけれども、先ほど個人的にということでしたが、オプトアウトについて触れられたかと思いますが、このオプトアウトというのは休息時間だけなのか。全体の労働時間規制とか、休日とか、そういうもの全体にオプトアウトというような選択肢を用意するということでございましょうか。
と問うたのに対して、
○小林所長 EUのことをモデルにして考えておりますので、EUの休息時間指令に基づき、各国が設けているオプトアウトに関しては休息時間に限定したものであります。
ただし、休息時間の対象としない職種と言いますか、人たちはどういう人にするかということは、どうも各国ごとにオプトアウトをつくるという形になって、どういう職種をEU全体で適用除外にするかということにはなっていないようでありまして、国によって違いがあるようです。
と、完全に逆の答えをしてしまっている点です。
職種とか一切関係なく、個人の意思に委ねているのは、(時間外含めて)週48時間という規定のオプトアウトであって、休息時間については、下記のような広汎な業務について「当該労働者に同等の代償休息期間が与えられるか、合理的な理由によりそれが不可能な例外的な場合には、当該労働者に適当な保護が与えられることを条件として、法律、規則若しくは行政規定又は労働協約若しくは労使協定によって」適用除外を認めています。
(a) 沖合労働を含め、労働者の職場と住居が離れている場合や労働者の複数の職場が相互に離れている場合の活動、
(b) 財産や生命を保護するために常駐が求められる警備や監視の活動、特に警備員や管理人又は警備保障会社の活動、
(c) サービス又は生産の継続の必要性のある活動、とりわけ、
(i) 研修医の活動を含む病院又は類似の施設、居住施設及び刑務所によって提供される収容、治療及び/又は看護に関する活動、
(ii) 港湾又は空港労働者、
(iii) 新聞、ラジオ、テレビ、映画制作、郵便及び電気通信サービス、救急、消防及び防災のサービス、
(iv) ガス、水道及び電力の生産、送電、供給、家庭廃棄物の収集と焼却場、
(v) 技術的な理由で仕事を中断できない産業、
(vi) 研究開発活動、
(vii) 農業、
(viii) 定期的な都市交通サービスで乗客の輸送に関わる労働者、
(d) 活動の波が予測可能な場合、特に、
(i) 農業、
(ii) 観光旅行業、
(iii) 郵便業
(e) 鉄道輸送に従事する者の場合、
(i) その活動が断続的であるか、
(ii) 労働時間を列車に乗車して過ごすか、又は、
(iii) その活動が輸送時刻表に関係し、交通の継続性と定期性の確保に関係する者。
(f) 指令89/391/EEC第5条第4項に規定された事情がある場合、
(g) 災害が発生し又は災害の危険が差し迫っている場合。
4 本条第2項に従い、第3条及び第5条の適用除外は、次の場合に認められる。
(a) 労働者がシフトを交替し、あるシフトの終了から次のシフトの開始まで1日及び/又は週の休息期間をその都度とることができない交替制労働の場合、
(b) 労働時間が1日中に分散する活動の場合、特に清掃員の活動の場合。
これらは、厳格に1日11時間のインターバルを入れられない職種だからで、できるだけすぐ後に「同等の代償休息期間」が付与されれば良いというのは、いってみれば休息時間について柔軟な変形性を認めているのと同じです。
なんにせよ、これらは指令で明記されているので、国内法でこれら以外に認めることはできません。
細かいことをいうようですが、せっかくの休息時間規制の話題が、変な方向に進んでしまうとまずいので、ここは細かく言っておきます。
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