二つの独立行政法人「科学技術振興機構(JST)」と「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」が先週、包括的な相互協力協定を結んだ。

 これまでは個別の協力案件があると、そのたびに知的財産の扱いや、費用分担、秘密保持などを協議していた。

 協定により、JAXAの有望な技術に対して、JSTが研究開発費をつけて発展させたり、宇宙航空以外での応用をめざしたり、といった協力がずっとスムーズになるという。

 合理的で結構なことである。

 政府の下で重要な研究開発を担う独法は、これにならって連携を強めてほしい。

 効果は期待できる。

 例えば、宇宙での天体観測用に開発したJAXAの技術が、JSTの資金で放射能汚染を画像で示すカメラに結実した。すぐに製品になり、福島第一原発の周辺で使われている。

 だが、これまではごく少数の個別案件にとどまってきた。

 各独法同士に互いの連携という意識が乏しいからである。

 JSTが他の独法とこうした協定を結んだのは初めて。JAXAも2例あるだけだ。

 新日鉄副社長を務めた奥村直樹JAXA理事長は、一昨年の就任直後からJSTに連携を持ちかけた。だが最初は担当部署さえはっきりせず、協定を結ぶまで時間がかかった。

 同じ文部科学省が主管する両者でさえ、それが現状である。別々の省の下にある独法間の垣根はさらに高い。

 4月の独法改革で、研究開発を担う独法は約30の「国立研究開発法人」として再出発する。主管は文科省のほか、内閣府、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省と8府省にわたる。

 国家戦略に沿った研究開発の推進をめざすが、同時に導入される主務大臣の関与強化が縄張り意識や省益の維持に向かう懸念もある。

 地球温暖化や自然災害への対策、少子高齢社会の医療など、分野融合的な研究や技術開発がますます重要な時代である。

 情報を共有し重要課題を効率よく多角的に研究するために、新法人同士の連携は不可欠だ。

 世界はさらに先を行く。国境を超えて技術や研究アイデアを集め、実用化を急ぐオープンイノベーションに向かっている。

 研究機関の連携に関して、日本は周回遅れといえるかも知れない。山積する地球規模の問題を解決するために、世界から知を集める仕組みづくりが国内でも求められている。