木曜時代劇 風の峠〜銀漢の賦〜(6)(最終回)「決戦」 2015.02.19


(山崎)峠を越えて…脱藩!?
(清右衛門)拙者直ちに馬で追いまする。
(源五)松浦将監を助ける旅に行く。
(蕗)蕗も共に参ります。
ご家老を助けます。
(将監)国境を越え森岡藩領に入るまでは源五がわしらの命綱。
今宵はこの先にて宿を取りまする。
おっ父…。
心配はいらねえから。
キャ〜!
(又次郎)騒ぐな!お前には人質になってもらう。
この宿から将監たち一歩も出さぬ!旦那様!蕗!おっ!わっ!あ〜っ!蕗!蕗!しっかりしろ!蕗!旦那様…。
すまなかった。
怖い思いをさせたな。
大丈夫だ。
参るぞ。

(将監)まだか?まだまだ。
(清右衛門)向こうは女子ども連れ。
峠の前で追いつくぞ!ハッ!わしはここで迎え撃つ。
お前は皆を連れて峠を越えろ。
迎え撃つ?一人でか?そうだ。
重輔。
蕗の事抜かりなく頼むぞ。
(重輔)承知。
いえ。
ご家老様みつ様若様。
私も旦那様のお手伝いをしここに残ります。
どうぞお達者で。
ばかを申すな!蕗。
待て。
待て!お前たちだけで迎え撃つとは無謀。
追いつかれたらわしも戦う。
いや追いつかれてはならんのだ将監。
お前には国替えの企みを潰すため見事命を使い切ってもらわねばならん。
そのためにまずわしがここで命を使い切る。
しかし蕗は…。
弾込めのお手伝いを致します。
子ども時分から旦那様と共に猪を撃ちました。
鉄砲には自信がございます。
しかし…。
(みつ)源五殿。
(みつ)おなごの命の使いみちはこれと見込んだ殿御のために…。
みつ様…。
鉄砲は2丁ある。
わしが撃つ間に弾を込められるか?はい!蕗!源五!ここはわしらで食い止める。
お前は峠を越える事のみ考えろ。
あなた…。
無理を申しすみません。
怖くはないか蕗。
はい。
不思議な事に蕗は今この上なく楽しくこの上なく幸せでございます。
追っ手を追い払ったあと蕗はどうしたい?月ヶ瀬に帰りとうございます。
父も母も月ヶ瀬に眠っています。
月ヶ瀬は生まれ育ったふるさと。
私の魂の帰る場所はきっと月ヶ瀬です。
分かった。
骸は共にここに眠らせ魂は共に…共に月ヶ瀬に帰ろう。
旦那様…あれは…。
なぜだ…。
なぜだ!しかもただの一人で!松浦将監!なぜ戻った!これほど腹の立った事はない。
なぜ戻った。
返答しろ!源五。
わしに二度も友を見捨てさせるな。
もしここに十蔵がいたら共に戦ってくれるであろう。

(いななき)旦那様!わしらが何のために残ったと思っているんだ!ぼやくな。
お前の鉄砲だけが頼りだ。

(いななき)蕗!はい。
源五。
(いななき)放て!源五!放て!駆けろ!弾込めに暇を与えずに駆け寄って討ち取れ!
(一同)オ〜!わ〜っ!蕗。
怯むな!行け!同じ事だ!もうよせ!ならば鉄砲を捨て尋常に立ち会え!大勢で押し寄せて何を言う。
諦めて帰れ!キャ〜!鷲巣!日下部源五松浦将監。
鉄砲を捨てろ。
駄目です旦那様!蕗!源五。
蕗を死なせてはあの世で十蔵に合わす顔がない。
松浦様!捨てろ源五。
お前に言われなくても捨てる。
鷲巣清右衛門。
わしはお主の仇だ。
ここで正々堂々と仇を討たぬか?相手をするぞ。
構うな小弥太。
そやつにそんな度胸はない!ゆうべも手下に蕗を襲わせた卑怯者ではないか。
そうだったな。
お主の父鷲巣角兵衛も子どものわしを斬るために小細工を弄した小心者であったの。
あ〜そうだったなあ。
肝っ玉の小ささは父譲りだ。
おのれ…言わせておけば!父の仇松浦将監!脱藩の罪でこの鷲巣清右衛門が斬り捨ててくれる!相手になろう。
参れ!こっちの3人はわしが相手だ。
小弥太!ここで死ぬ訳にはいかんぞ。
源五お前も死ぬなよ!そっくりそのままお前に返す!竜牙…。
小弥太!もらった!小弥太!大事ない。
が足をくじいた。
休んではいられん。
峠を越えるぞ。
しかし…峠を越えるとは案外大変な事だな。
やっと気付いたか。
さんざん人に迷惑かけているんだ。
しっかり歩け。
蕗荷を頼む。
はい。
さ行くぞ。
わしは家老になって以来ずっと考えていた。
何を?九鬼夕斎とわしは違うようでいて同じかもしれんと。
そうか…。
だが今わしは夕斎とは違うとはっきり分かった。
夕斎は失脚した折一人だった。
一人きりで腹を切った。
だがわしには今も友がいる。
おっ父…。
ここが風越峠だ蕗。
はい。
越えるか源五。
ああ。
共に越えるぞ小弥太。

(重輔)旦那様…。
あなた…。
もうすぐだ。
それがし森岡藩家老奥平頼母の家臣馬渕五郎左衛門と申しまする。
お迎えに参上つかまつりました。
ここから先はどうぞお駕籠にて。
かたじけない。
松浦将監でござる。
(三五郎)父上…。
旦那様…。
あなた…よくぞご無事で…。
心配をかけたな。
もう大丈夫じゃ。
源五殿。
蕗。
まことに…まことにお礼申し上げます。
いや。
ではみつ様方々。
蕗と拙者はこれにて。
何を申す!我らと一緒に江戸に参れ。
月ヶ瀬に戻れば罪を問われる。
何だ。
別れがそんなに寂しいか?小弥太。
松浦様。
先ほど父の十蔵も共に風越峠を越えました。
どうか道中ご無事で。
そうか…。
十蔵が…。
ハハハ。
蕗…。
ありがとう。
源五を頼むぞ。
源五。
早まって無駄腹を切るなよ。
そっちこそ江戸に着くまでにくたばるなよ。
それが別れの挨拶か!では。
松浦様。
あの御仁は…。
我が友日下部源五でござる!ご家老が…松浦将監様が脱藩!?はっ。
拙者その手助けをし申した。
途中やむにやまれず風越峠手前の観音堂辺りにて追っ手の何人かを撃ち何人かを斬り申した。
今なら手当てをすればあるいは何人かは助かるやもしれんと存ずる。
つきましては拙者の切腹場所でござるが…。
それどころではない!まあ是非もないか…。
(物音)旦那様?おたつ様…。
あ…あの…。
(たつ)父から文をもらいこたびの事全て承知しておる。
まずお前は津田の家に参れ。
切腹のお支度か。
あ…はい。
旦那様に言いつかり…まだ途中でございますが…。
それも津田家で計らう。
まず参れ。
でも…。
お前を取って食うつもりはない。
参れ。
将監はご本家佐野家を動かし幕閣入りの話も国替えの話も泡のように消える。
わしは倅に…家督を譲らされ隠居させられる…。
山崎多聞!ご本家には既に拙者の手の者を配しまた将監がその裏をかいて江戸のご親戚筋に泣きつく場合も考え密使を送りました。
なんと…。
では将監が現れたら…。
即座にその場で斬り捨てる手配なれば。
多聞!その方だけが頼りじゃ!もったいない!つきましては今朝自首してきた郡方見回りの日下部源五の処分の事にござりまするが…。
即刻打ち首じゃ!一族郎党ことごとく打ち首にせよ!
(伊織)父上。
くれぐれも短気を起こさず舌などかんでご自害などなさいませぬよう。
婿殿。
毎朝の説教もう勘弁だ。
いいえ。
父上はやると言ってやらずやらぬと言ってやる御仁。
信用できませぬ。
それにしても山崎多聞がいまだわしを生かしておるのはなぜだ。
拙者が思いますに山崎様はこたびの騒ぎをご本家や江戸表も含めて逆らう者たちを一掃する好機と捉えておられるのではないかと。
何?
(伊織)そのために全てを知る父上をその際の生き証人にする腹積もりではないかと。
わしを…生き証人に…。
はい。
父上。
その際には「俎の上の鯉」となって頂きどうか山崎様にお味方し全てをお話し下さいますよう。
さすれば蕗も父上もいいえこの津田伊織もたつも一族郎党命をつなぐ事ができまする。
ただただそこに懸かっておりますれば…。
誰が誰を味方するとか誰と誰が通じておるとかそのような面倒な事は一切分からぬ。
どうする?ただいまの打ち明け話構えて他言ご無用。
しかしこのままではこちらが蛇の生殺し。
重ねて他言ご無用!
(次郎作)もうすっかり冬ですね蕗さん。
そうね。
座敷牢も冷えるでしょうね。
蕗。
奥へ参れ。
あ…はい。
(たつ)そうではない。
こう。
こうじゃ。
背を曲げてはならぬ!津田家で預かる以上は女のたしなみをまずしつけるゆえ覚悟をなさい。
あの〜。
旦那様に一目…。
なりませぬ。
自分たちのした事を考えてみなさい。
後悔は…しておりません。
当たり前じゃ。
津田!あれから既にひとつき半。
なぜ将監はご本家にもご親戚筋にも現れぬのだ?津田。
津田伊織!は〜。
拙者も事あるごとに父に探りを入れておりまするがどうものらりくらりとかわされて。
しかし松浦様脱藩の陰にはかなりの大物がいるようでございまする。
山崎様ここはどうかお気長に。
なぜだ。
なぜ現れぬ。
将監!ハハッやった!やった!父上一大事!父上!父上一大事!父上一大事でございまする!ん…ん?お〜婿殿。
父上!松浦様がなされましたぞ!何をした?松浦様が向かった先はご本家佐野家にあらず!ご親戚筋にもあらず!なんとご公儀ご老中松平越中守定信様!なんと…。
ご老中は松浦様の水墨画の大のご贔屓らしく。
水墨画…。
なるほどその手か!はい。
(定信)いかがかな?見事なる逸品。
恐れ入りました。
さすがは月ヶ瀬の雪舟殿。
ハハハ。
めっそうもない事にございまする。
そういえばご老中様。
月ヶ瀬藩浅川家のお国替えの話がどこそこかに持ち上がってるとかないとか。
ほ〜う。
こたびはそれで江戸へ。
いえいえ。
ご安心なされよ。
浅川家は神君家康公からの譜代大名。
戦ありとなれば要となる月ヶ瀬の地を任せられるのは浅川家をおいてほかにはないと存ずる。
ありがたきお言葉にございまする。
(伊織)松浦様が鷲巣清右衛門を斬り捨てたのも先代からの確執による私闘…私事の争いと扱われ返り討ちになされたという事に落ち着きましょうな。
父上はたまたまあの場を通りかかり訳も知らず松浦様の助太刀をされたという事で。
いやいやしかしわしは鉄砲で4人ほど撃ったぞ。
ん〜まあされば…父上ももうお年でございますからな。
年?黒岳に湯治に参られのんきに猪狩りをしていたところ間違えて人を撃ってしまったという事で…。
何せお年でございますから。
目も弱っていたとすれば同情の余地もあり無罪放免も堅いと…。
目が弱り猪と間違って人を撃つなど断じてない!父上!物は言いよう嘘も方便!そのような嘘はつけぬ!ついて下され。
拙者やたつ蕗のためにも是非!嫌だ。
父上の命は父上だけの命にあらず!我らの命とつながっておりまする。
どうかお聞き分け下され!
(山崎)ご老中は松浦将監を大層気に入られ忠義の士とお褒めになったそうでござりまする。
山崎多聞…。
腹を切れ。
いや…。
なぜ…なぜ拙者が!わしは隠居をし家督を倅に譲るのだ。
お前は腹を切れ。
しかし…しかし…。
もともとこたびの国替えの秘策はお前がわしに吹き込んだものじゃ。
腹を切るのが嫌なら頭を丸めて坊主になれ!坊主になりまする。
坊主になりまする!もうよい!はっ!坊主になりまする。
ぼ…坊主になりまする。
(伊織)やはり拙者のにらんだとおりになりました。
殿は家督をご嫡子惟孝様に譲られてご隠居。
山崎多聞様はお側用人を免ぜられその後任は…あなたの婿この津田伊織が仰せつかってございまするぞ父上。
父上も晴れて許されいやまことによき日で。
それで小弥太は…いや将監はどうなった?はい。
ご老中の庇護の下江戸に居を構えられ嫡子三五郎殿は白河松平家のお召し抱えとなられました。
そうか。
されば父上はどうなさいますか。
ん?あなたの婿は月ヶ瀬藩6万5,000石のお側用人。
何なりとお望みの地位と褒美をおっしゃって下さいませ。
(ため息)鷹島屋敷の屋敷番でいい。
いや…またまたご冗談を。
あのようなあばら家の屋敷番など…。
人にはそれぞれ自分に合った生き場所がある。
将監には将監の生き場所わしにはわしの生き場所。
死に場所ではない。
生き場所なのだ婿殿。
あ…はあ…。
されば父上その生き場所に花を。
どんな場所にも花は咲きまする父上。

(ひぐらしの声)旦那様。
これは松浦様の…。
絶筆だ。
わしへとの遺言だったそうだ。
「玲瓏山に登る」。
蘇軾の詩だ。
「何年僵立す両蒼龍。
痩脊盤盤としてなお空に倚る」。
どんな意味でございますか?2つの山の峰が年寄りの背骨のように折れ曲がり空に寄りかかっている。
フフッ。
小弥太め。
己とわしを年寄りだと言うておる。
「翠浪舞い翻る紅の罷亜。
白雲穿ち破る碧き玲瓏。
三休亭上たくみに月をひき九折巌前たくみに風を貯う。
脚力尽きる時山さらに好し」。
「脚力尽きる時山さらに好し」。
分かっておる。
わしも間もなくそっちに行く。
この2つの山は旦那様と松浦様。
間に横たわる天の川…銀漢はきっと…。
ああ。
十蔵だ。
いろいろあったがわしらは面白く生きた。
さて寝るとするか。
どっこらしょ。
実はおたつ様が…。
ん?松浦様が亡くなられさぞや旦那様は気落ちされておられるだろうから今宵からは蕗が旦那様のお側に寝て…。
え?お心をお慰めし見事日下部のお家を継ぐ男児をあげよとお命じに。
いやいや!ちょ…ちょ…ちょっと待て。
わしは何も聞いておらん。
蕗は喜んで承知致しました。
えっ!?殿方は仲の良いお友達が亡くなられますとこの世をはかなまれるようでございますが旦那様にはまだまだ…。
いや…。
お酒をお持ち致しますね。
あ…いやいや…。
ん?お…。
小弥太よ…十蔵よ…。
そっちに行くのは10年ほど遅れるがまあ勘弁しろ!・「決意の先には」ハハハハハハハハハハ!・「お前の姿が」・「離れてた気持ちが」・「嗚呼〜間近に」・「すべての結末」・「天に任せよう」・「漢の往く道」・「嗚呼〜ひたすら」・「時が呼びあい」・「今を呼ぶ」・「夕映えに燃ゆる」・「漢ありて」2015/02/19(木) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 風の峠〜銀漢の賦〜(6)[終]「決戦」[解][字]

国境を目前にして源五(中村雅俊)と蕗(桜庭ななみ)、そして途中で引き返してきた将監(柴田恭兵)の三人は、鷲巣(平岳大)が引き連れた弓隊と最後の決戦を繰り広げる!

詳細情報
番組内容
国境を目指す将監(柴田恭兵)一行だったが、追っ手をかわせないと判断した源五(中村雅俊)は時間稼ぎをすると鉄砲を取り出す。蕗(桜庭ななみ)も共に残ると一行を説き伏せ将監たちを送り出す。一方、鷲巣(平岳大)は父親のかたきを討とうと弓隊を引き連れ馬を走らせていた。戦の準備を整えた源五と蕗が死後の再会を約束していると将監が単身峠を引き返してくる。「二度も友を裏切らせないでくれ」と。そして追っ手が現れた…!
出演者
【出演】中村雅俊,桜庭ななみ,中村獅童,池田鉄洋,吉田羊,平岳大,高橋和也,麻生祐未,柴田恭兵
原作・脚本
【原作】葉室麟,【脚本】森下直
音楽
【音楽】小六禮次郎

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

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日本語
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2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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