中国:脱出相次ぐウイグル族 強まるイスラム教抑圧

毎日新聞 2015年02月22日 11時57分(最終更新 02月22日 13時54分)

新疆ウイグル自治区
新疆ウイグル自治区

 【上海・隅俊之】中国で新疆ウイグル自治区のイスラム教徒ウイグル族による不法出国が相次いでいる。多くは東南アジアに向かい、一部は歴史的につながりの深いトルコに逃れている。中国当局はウイグル独立派組織がシリアなどの過激派組織への参加を扇動していると主張するが、宗教的な抑圧から逃れようと脱出を図った人も多いとみられている。

 「あそこではもう暮らせない。妻は(ベールで)頭部を覆うことができない。(自由に)祈ることも禁じられている」。中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、自治区から1年以上かけてトルコ中部カイセリに逃れたウイグル族の男性はこう訴えた。男性は友人が警察に逮捕されたのを機に、自らの身にも危険が迫っていると判断、中国からの脱出を決意したという。

 男性にはパスポートがないため徒歩で密出国、28日間かけてベトナムに着いた。あっせん業者の手助けでカンボジア、ラオスを経てタイへ。さらに真夜中に小さなボートで海を渡り、密出国から3カ月後にマレーシアに到着。同地のトルコ大使館に助けを求め、トルコへ逃れた。

 逃避行には子供3人と妻を同伴した。食事は主に卵やアーモンド。森では木の葉や雨水でしのいだ。一緒にボートに乗った別の家族の5歳の女の子は途中で海に落ち、誰も泳げなかったため助けられなかったという。

 中国当局は新疆ウイグル自治区で相次ぐ爆発物などを使った暴力事件を背景に、ウイグル族への締め付けを強化している。米政府系の自由アジア放送(RFA)によると、17日にも自治区のアクス地区バイ県で、警官とウイグル族が衝突。警官4人を含む計17人が死亡した。警察が民家に集まっていた10人程度に解散を命じたところ、ナイフやおので襲われ、警官側の発砲で通行人4人も犠牲になったという。

 当局は先月18日、不法出国の疑いで検挙したウイグル族などが昨年5月以降852人に上ると発表。国営新華社通信は、容疑者の一部がシリアなどで「聖戦」に参加するつもりだったと供述した、と伝えた。

 中国当局は、独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」がウイグル族に過激な宗教思想を吹き込んでいると主張。複数の外交筋も、ウイグル族がシリアなどで過激派組織に加わっているケースがあるとみる。当局は、過激派との連携を強めた「帰還戦闘員」が中国でテロ活動を行うことを強く警戒しているようだ。

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