「初心者はROMってろ」(ROM=Read Only Member)て言うじゃないですか。
石橋を叩いて叩いて壊れた橋を見て「ほらやっぱり壊れたじゃん?」と安心する自分は小説家になろうでもちゃんとROMりました。つまりは読み専です。
3年超小説家になろうで読み専やったし、そろそろ小声で考察なんかしちゃってもいいよねー!という訳で、なろうを3年ROMった自分から見た「小説家になろう」ランキング考察のコーナーです。
観測範囲に限りがあるので「新参者が!そこは解釈が違う!!」という諸先輩方からのご助言大歓迎ですー。
コメント欄ないですが(・ω<) テヘペロ
目次はこちら。
- テンプレと二次創作と人気キーワード
- なろうランキングの仕組みとランカーへの道
- 儚き夢「日間ブースト」
- 我ら名もなき「スコッパー」
- 無料プラットフォームが見せる夢
テンプレと二次創作と人気キーワード
ランキング考察に先立って、なろうで「選ばれる作品」になぜテンプレ設定が多いのか。
まずもって最初に浮かぶのが「キーワード流入を見込んで」ということ。ここら辺SEOを勉強した人はとてもわかる世界なんじゃないかな。キーワードを作品の設定に練り込むことで、お得意様になるかもしれない可能性、需要を取りこぼさないようにという判断ですね。
なろうテンプレとして設定に盛り込まれる人気キーワードとしては、
- 女性向け:異世界召喚女子、乙女ゲー世界転生、悪役令嬢転生
- 男性向け:VRMMO取り込まれ(→集団異世界転移)、召喚チーレム、転生内政、職人or商人成り上がり、異世界召喚傍観
あたりだと思います(...召喚、転生、転移のキーワード変遷追ったら面白そうだなー。)
ブームもあるので、長期連載のつもりならこれ頼りというのは危険です。
最近では「小説家になろう内での書き方マニュアル」的なものを新米作家が読むようになったから、も一因だと思います。要は、成功モデルがなろう内で共有された。
なろうでは小説の他に、エッセーとして「なろうで人気作家になる方法」「小説でアクセスを稼ぐ方法」なども投稿されていて、結構な人気を博しています。そこでの指南で多いのが「人気ジャンル・キーワードをはずさない」「毎日更新」「同ジャンルの人気作と投稿時間を被らせない」「主人公を活躍させる(ヘイトを貯めない)」etc。ここら辺の定石を踏む作家さん、本当に増えた印象。
気持ちはわかる。右も左も分からない状態で、または書いても書いても人気が出ない状態で、教科書やマニュアルってお守りとして心強い存在ですもの。
最近「青雲を駆ける」の肥前文俊先生が↓のアンケートを始めていて、これを分析して始める新米作家さんも多いんだろうなーと。
書籍化作家に聞いてみた。面白いものを書くための15の質問+1
ではなろう内で定石となったその源泉は?いろんな説があると思われる中、
小説家になろう女性向けのブーム変遷を考察してみた。 - ゆるふわ√3
今は原則だめですが二次創作(オリジナル作品のパロディ)も盛んでした。なろうに同じような世界観を持った「テンプレ作品」が多いのは、元々二次創作書きな作家が多く、馴染みやすかった名残とも言われますねー。
自分はこの説が有力だと信じてる派です。
ゲームや漫画、小説内で書かれなかったエピソードを自給自足する「二次創作」の中でも「ゲームの世界に迷い込んだオリジナル主人公」の話を書く「ドリーム小説」(夢小説)というジャンルがあります。
小説家になろうでは、2012年に二次創作の投稿が明示的に禁止されるまで、結構な数の二次創作が投稿されてます(今は運営によって通達の元削除されました)。
七沢またり先生の「勇者、或いは化け物と呼ばれた少女」も、元々二次創作として掲載していたのを、なろうの二次創作投稿禁止を受け、本作品の要素を取り除いてオリジナル作品として一から叩き直した作品でした。
ゼロベースで書くより原作があるものをベースに展開したほうが、作家と読者間で設定を共有しやすい、イメージを作りやすいという利点はやはりあります。作家と読者間で設定共有した上で物語を展開すれば、敷居は下がりますから。
二次創作的手法で書く人達がそれを昇華して「ゲーム的な世界」メタ視点で捉えた作品群がなろう内で人気を高め、その人気を分析した指南・ノウハウが中期なろう流入作家の間で浸透し、なろうテンプレと呼ばれるものが流行ったんじゃないかなーという、考察というよりほぼ独り言です。
でも、なろうの読み専に多い「通勤通学列車内で、次の駅までの間に気軽に読みたい」読者にとっては、設定説明にずらずら時間をかけるより、物語の展開に時間をかけて欲しいだろうし設定説明はしょる、のは効率的な判断という気がします。そこを指摘して埋めるのは、書籍化における編集者の腕の見せ所ー、なんて。
なろうテンプレは批判も多いですが私は結構好きです。なんとなく、フィギュアスケートのショートプログラム(SP)ぽくないですか?まずは皆、同じ必須要素を滑って技術力を示し、最低点を満たしたと判断された上でフリープログラム(FP)に進める。
比較しやすいテンプレ作品で作家の筆力的なものを判断し、他のオリジナル設定作品に手を出すか決めると、地雷、ハズレ作品に手を出さずにすみます。当たり前のことですが、テンプレってつまりは王道で、使い古された王道が評価されるのは実力のある人だからこそなので。
お約束を逆手に取った更なるメタ作品も好きですー。各世界における勇者と呼ばれる人たちが掲示板で勇者業の悩みを相談する、おけむら先生の「勇者互助組合 交流型掲示板」とか、目から鱗でした。
という前提でのランキング考察。
なろうランキングの仕組みとランカーへの道
なろうのランキング期間は、日間、週間、月間、四半期、年間、累計の6つ。総合の他、ジャンル別ランキングもあります。
なろうのランキング順位は以下の計算式で決まります。
- ランキング順位=評価合計+(ブックマーク件数×2pt)
- 評価合計=文法・文章評価(5点満点)+ストーリー評価(5点満点)、評価は上書きが可能
- ブックマーク:作品ごと設定、いつでも解除可能。
- この他、作家自体をお気に入り登録する機能あり
例えば「この作品面白い!」と思った人が文法・文章評価とストーリー評価で5点満点つけてブックマークした場合、5+5+1×2=12点が入ります。これが1アカウントで出来る最高点。「気に入りそうだけど様子見で評価なしのブックマークのみ」「感動したから評価はするけど読み返さないのでブックマークなし」「つまらん」と0~12点を振り分ける形です。
今日(2/21現在)だと日間ランキングの300位が50ptなので、昨日新作を投稿して、12pt振り分けてくれる人が5人いれば、60ptで日間ランキングに載ります。
評価、ブックマークを行えるのはアカウント(無料)を持っている人のみで、自分のような読み専の他、作品を公開する作家自身も行えます(自演は不可)。
ランキングに掲載される、いわゆるランカーの条件としては、すでに次の方法が言及されてきました。
- 作家間交流:作家同士で割烹(作家の活動報告)や企画などで交流→投稿作品を評価しあう。
- 作家ファンを増やす:お気に入り登録をすると、作家が新しい連載を開始した際通知され、作品の評価&ブックマークに繋がりやすい。
- 人気キーワードを小説に盛り込む:「異世界転移」「生産チート」「知識チート」などのいわゆる「テンプレ設定」を盛り込み、キーワード流入を見込む。前述。
- 毎日の定期更新:露出を増やし、読者の日参を促す。
作家は、ブックマーク解除させないため、読者のヘイト(ストレス的何か)を貯めない必要があります。そのため、シリアスな展開を短期間であっさり解決させる「短期的にはストレスなくて良いけれど全体として盛り上がりに欠ける」という展開が頻発するのはなろう的仕様です。ネガティブな伏線張りがしづらいので、青春成長モノやミステリ書きさんにとっては本当、なろうは鬼門ですね。
でも上手い書籍化は、ここのヘイトをうまく調整(再構成)しているな、と思ったり。みかみてれん先生の魔王イサギとか。なろう版は1日1話×複数日で読むこと前提で、ヘイトを貯めない主人公TUEEEEのテンプレを踏んでたのですが、書籍版は...むにゃむにゃむにゃ(ネタバレ回避)。1冊の本前提の再構成がとても良かったー。
なろう内でチートが頻出する最大要因は「読者が求めているから書く」という以上に読者のヘイトを上げずに気持ちよく読んでもらう、そういう戦略なのですねー。
また、1話完結の短編やそれに準じる中編(3~10話以内)は、更新を追いかける必要がない(=ブックマークの必要がない)、露出が少ないため、週間や月間のランキングで上位に来る難易度は高めです。
ただ作家仲間同士の場合、シリーズを読むよりは短編・中編を読んで交流する方が易しいので、短編・中編が廃れることはありません。新規の読者にとっても、長編より中編、短編の方が読むには敷居が低いですしね。
逆から言えば、小説家になろうにおける短編・中編は質が高い可能性が高いというわけです。だって、他の作家や新参読者に差し出す、名刺のようなものなのですから。
儚き夢「日間ブースト」
先ほどのランカーの条件、
- 作家間交流
- 作家ファンを増やす
- 人気キーワードを小説に盛り込む
- 毎日の定期更新
基本的に、評価&ブックマークの基礎ptになるのは1.と2.です。なろう歴の長い作家ほどランキングは上位になりやすく、なろう歴が短い作家の場合はほぼ運任せになります。
1.&2.に加え、3.のキーワード検索経由でやってくる読者などを上手く掴むことで、まずは日間ランキング上位を目指すのが常道です。
日間ランキングに掲載されれば、翌日には日間ランキングを住処にする読み専たちが作品を読んで評価&ブックマークしてくので、後は坂を転がるボールのごとく点数が積みあがります。なぜなら「ランキング掲載作品」というハロー効果が働くので。これを「日間ブースト」と呼んだりします。
日間ブーストで勢いが付いたら、あとは4.を頑張ります。せっかく日間ランキングに掲載されても、その後の定期更新で一見さんをお得意様に引き上げないと意味がありません。読者はエタる作品に警戒しているので、ここら辺の見切りはとても早い。容赦なくブックマークを外していきます。そのため、読者がファンになるまで連続更新せねばならないのです。人気作家だと5千字前後の文章を毎日のように投稿します。おおう...。
後は、内容の面白さの度合いによって、週間ランキング、月間ランキング、四半期ランキングまで残ります。
ここまで読むと「複数アカウントを作って評価やブックマークの水増ししちゃえー」と思うかもしれません。でも、なろうは他の無料プラットフォームに比べて水増しが少ない…訳はないですが、不正が目立ちやすく、淘汰されやすい環境に思います。
理由はやはり、パトロール隊やアンチによる身辺調査が各所で行われていること。お気に入り作品が書籍化するため、邪魔者は排除すべし!当然チェックは厳しいですー。週間ランキングあたりまでは水増し不正でランカーになれても、いろんな力学の結果、月間ランキングの頃にはそっと削除されているのが常です。
まとめると、
- なろう歴が長くなれば長くなるほど親しい作家仲間も固定ファンも出来てランキングに掲載されるのに有利/なろう歴が浅い作家、作家仲間やファンとの交流が足りないコミュ障気味の作家は不利
- なろうマッチングした人気キーワードを盛り込まないと読まれない
- 定期更新する体力がないと、ランキング経由で来た一見さんを顧客に変えられず、日間ランキング止まりになる
条件を満たさなければ、チラ裏レベルに読まれないということです。
アメリカンドリーム的に「ちょっと思い浮かんだアイデアを小説にして投稿してみたら人気作家になってプロデビュー!」みたいなことは、早々起こらない儚い夢です。
ただ、そんなチラ裏気味な作品でもある日唐突に光を浴びることがあります。光を浴びせるのは、そう、スコッパーです。
我ら名もなき「スコッパー」
スコッパー。まだ見ぬ金脈(傑作)を目指し、スコップ片手に数多の小説群を掘り返しては嘆き、掘り返しては絶望し、掘り返して時折金粒(良作)を見つけたりする、別名:青田買いヤーのことです。「なんか面白い小説読みたい」という呟きを聞きつけては見つけた良作を紹介し、名も告げずそっと宣伝していきます。
出没地点は、基本は掲示板ですが独立してサイトやブログを立ち上げてる人も。彼らには、すでに宝石店に並んだ(書籍化された)、ランキングに載って手垢のついた作品群はあまり興味がありません。「この小説は俺が育てた」感こそ至高。骨董商的に、過去、運とタイミングを逸して世に出なかった名作を探す人もいます。なかなかに不毛ですね。
スコップする方法として、定石はキーワード絞り込み検索ですが(ランキング?なにそれ)、自分がこれぞと思う作家のブックマークを辿ったり(ハズレ率が少ない)、古株スコッパーの推薦作と同作家の別作品を探したり。骨董商的に過去の作品を探したいときは、昔の完結済作にリンクを飛んで、その下の「この小説をブックマークしている人はこの小説も読んでいます!」から古い作品を捜し当てたり。
小説家になろう内の詳細検索で読了時間検索もあるので、短めの長編、中編を探すのもスキー。長編はエタる可能性が高いしドラゴンボール理論で中だるみするんですよね。
自分も一時スコッパーとして名を上げたい!なんて浅はかな夢を抱いたこともありましたが、スコッパーほど老舗感が物を言う世界はありません。だって「あの人がいうなら間違いない」という過去に対する信用と、未来に対する信頼を兼ね備えたスコッパーの推薦作品ではないと、忙しい現代人は読んでくれないのです。
これきっと名作!と思ってそっとリンク貼ったのにスルーされて、その作品がやがて更新止まって涙流した日が何度あったことか。やがて私はスコップを自ら折ったのです。地雷原に足を踏み入れて、スコップが折れたことも何度もあったけども、最後に辞めたのは自分の意志でした。
そんな訳で、作家間交流やファンとの交流をしてない、一作目投稿である、割烹も書いてないのに人気が出たケースは、だいたいスコッパーの精です(誤字じゃない)。
自分のスコップが掘り出した作品がランキングに掲載され、書籍化に至ると、名もなきスコッパーたちは静かに祝杯をあげ、そしてすぐまた発掘作業に戻っていくのです。まだ誰も見ていない、新たな金脈(傑作)を目指して...。
なろう書籍化で、紙書籍も電子書籍も購入した思い入れ作品ラインナップ! - ゆるふわ√3
無料プラットフォームが見せる夢
書こうと思ったら一つ前の記事へのコメントでだいたい書かれてて書くことなかった。
id:IthacaChasma やはり機材と技術の壁を素人が乗り越えられなかったボカロと比べ、なろう(とニコ生実況)は素人が夢を見られる場所として機能し続けている感がある。ハードルの低さ・裾野の広さはやはり力だなと思うなど。
素人自身が収益化、書籍化できる手法が選択肢として別にないとプロの狩場にしかならない気もします。そういうモデルを作ったYoutuber界隈なんかは素人にとってのアメリカンドリームとしてうまく機能してるんだな、とか。
ちなみにこの記事って、はてなブックマークとの類似点を意識して書いてます。
ランキング掲載のアルゴリズムこそ違えど、話題になるキーワードが登場して、時には中身よりコミュ力高めのサイトやブログの方がホットエントリに上がってきて、新参より古参の方がブックマーカーとして信頼されて、...etc。
「小説家になろう」も、あまり評判の良くない評価方式だったり、昔の作品の検索しやすさだったりを改善すれば、10年選手な無料プラットフォームとして生きながらえていくんじゃないかしら、とかー。
そんなわけで本当は、はてなブックマーク10年に寄せて「今週のお題:10年」として書く予定だったのに日々の忙しさに任せて更新忘れてた自分が周回遅れで通りますY =゚ω゚)