村上さんの比喩表現が大好きです。どうしてそういう言い方を思いつくのだろうと不思議でたまりません。例えば、「トーガをまとったローマ人が広場の真ん中で踏み台の上に立って、関心ある市民たちに向けて布告を発するみたいに」なんて、書いていて一発で思いつくのですか? それとも、ああでもないこうでもないとひねくりながら生み出していくんですか?
(ねこさん、男性、43歳)
僕の場合、比喩はほとんど瞬間芸です。さっと出てきます。「座布団、一枚」みたいな感じで。このようなメールの返事もみんなだいたい瞬間芸です。そうしないと、これだけの数の返事は書けません。小説も(小説の場合はあとでじっくり書き直しますが)、書いているときはさっさかさっさか、流れのままに書いていきます。ものを書くとき、流れってすごく大事なんです。
村上春樹拝