16日に放送されたNHKの「ニュースウオッチ9」で、「“預金封鎖”もうひとつのねらい」という特集があった。
敗戦直後の預金封鎖には財政を立て直す狙いがあったという内容で、特集の最後にはキャスターが「今の日本と当時と安易に重ね合わせるわけにはいかない」としながらも「終戦直後の出来事と片付けられない」「財政健全化は常に肝に銘じなければならない」などとコメントしていた。
預金封鎖とは銀行預金などの金融資産の引き出しを制限することで、69年前の1946年2月16日に実施された。
当時の預金封鎖は、猛烈なインフレ対策として強制的に貨幣の流通速度を減らすためといわれていたが、番組では「財産税を課税する必要からだった」という当時の大蔵大臣、渋沢敬三氏の証言記録が紹介された。
筆者も大蔵(現・財務)官僚であったので、預金封鎖の事実は知っていた。若いときには、戦後の財政史をよく調べたものだが、『昭和財政史−終戦から講和まで』(全20巻)という資料でよくまとめられており、さらに必要があれば、その元資料も保存文庫という資料室で調べることができた。
戦後の財政史を勉強した人には、預金封鎖が財産税のためであることは以前から知られていたことである。と同時に、当時の猛烈なインフレのために、財産税があまり意味がなかったこともわかっている。
番組では財産税について「国民が持つ10万円超の預金や不動産に最高90%課税をし、敗戦による国の借金を国民に負わせる異例の措置」と説明され、400億円の収入があったとしている。