俳優として、とてもワクワクした週でした。
今週は、とても大変で重みのある内容でした。でも、演じるうえでは、すごくワクワクしたんです。 不思議な話かもしれませんが、俳優というものは、痛みが伴うようなお芝居ほど気持ちが高揚するものです。 玉山さんが演じるマッサンとエリーのすばらしい関係、ふたりのすてきなシーンが撮れました。 こういう瞬間を演じられることに、俳優として大きなやりがいを感じました。
「わしらはもう子どもをつくれんのじゃ」とマッサンから聞いたとき、エリーの中でまず起こったのは否定でした。 その事実を拒絶する。だけど彼女の一部分では、どこか分かっていたと思うのです。 でも、それを受け入れることができなかった。このときの玉山さんの表情を私はとても覚えていますが、 この事実を隠していたことへの怒りとか、子どもが産めないさみしさとか、いろんな感情がないまぜになって、 エリーの感情が爆発してしまったんだと思います。ここまでエリーが感情をあらわにすることって、なかなかないことですよね(笑)。
子どもを流産して、さらに二度と産めないと知って、悲しみのどん底にいたエリーが「子どもを育てたい」と思えるまでを 1週間のドラマで描くのはとても難しいことです。でも、エリーの悲しみやさみしさを理解してくれるマッサンがいて、 英一郎もそばにいて、キャサリンがサポートしてくれて、鴨居の大将と英一郎の親子の関係があって。 そんな少しずつの積み重ねと、「母親になって子どもを育てたい」というエリーの変わらない気持ちがあったから、 ここまでエリーは立ち上がることができたのでしょうね。
「マッサン、養子もらう気ないか?」 思っていなかったキャサリンからの提案。 「マッサン、やっぱり子供ほしい?パパになりたい?」 マッサン、キャサリンの提案をエリーに打ち明ける。 「マッサン、私じゃない誰かと結婚したら、パパになれる」 ごめんなさい、の言葉を繰り返すエリー。
亀山エリー シャーロット・ケイト・フォックスさん ふたりの愛がこぼれた、ひとつの証。
女性にとって、子どもを産めないということはとても怖いことです。 本当に大切なことだからこそ、その思いをただただ込めて、「ごめんなさい」という気持ちを伝えました。 でも、何よりもエリーを愛しているとマッサンは言ってくれて、エリーの良心のかしゃくというか、子どもを産めない自分を責める気持ちを取り払ってくれました。 すべてが洗い流されたとは思わないけれど、きっと怖さはなくなったんですね。
ここでマッサンに思わずキスしたのは……私のアドリブです(笑)。 カットの声がかかった瞬間に「ごめんなさい!」って言いましたけれど(笑)。 このふたりは長い時間を連れ添っている夫婦だから、そうなるのが自然の流れに思えたのです。 ふたりの愛の物語の中で、ひとつのピークがここにあるように感じて、このシーンはとても愛おしかった。 すごく愛にあふれたシーンになったと思います。
亀山政春(マッサン) 玉山鉄二さん いま伝えられるのは、僕の愛しかない!
この第12週を演じる僕のプランとして、マッサンをできた旦那さんにはしたくないと思っていました。 最初、もう子どもが産めないという事実をエリーに伝えられないのは、マッサンの弱さであるし、同時に人間らしさでもあると思う。 そこをなんとか乗り越えて、悲観的な思いを抱えているエリーに対し、マッサンのラブをどうやって伝えるのか。 このシーンは、夫婦の問題に対してきちんとぶつかっていくふたりの姿を見せたいと思ったので、 本番前、監督とのディスカッションが長引いたのを覚えています。
1度のテスト撮影だけで本番に臨みましたが、僕自身もすごく高ぶった思いがあったし、 そんなマッサンの愛をしっかり受け取ってくれたからこそ、あのエリーの表現があったんだと思います。 これまではずーっとエリーに励まされてきたマッサンだから、今度はいよいよマッサンの番。なんとか彼女が前を向けるように、 言葉を振り絞ったんだと思うんです。その思いが、エリーの心にちゃんと響いてくれたんだなって、そう思えた瞬間でした。
今週のテイスティングワード
12/15(月)放送 人生、七転び八起き。またきっと幸せはやってくる!愛があれば乗り越えられる!
キャサリンのこのセリフ、大好きです。なぜなら、マッサンもエリーもまさに「七転び八起き」で生きているから。 いつだって転ぶ、だけど、必ず立ち上がる。毎日毎日いろんな失敗をするし、私自身もそうだけど(笑)、また立ち上がればいいと思うのです。 エリーも、私自身も、とても大好きな言葉です。
エリーを励ますキャサリンこそ……?
「(悲しみを乗り越える)その秘密はな、マッサンが知ってる」と、キャサリンがエリーを励ましてくれるこのシーン。 エリーが泣かないように元気づけるキャサリンですが、私を見るたびに逆に彼女が泣いちゃうから、ずっとキャサリンは私から目をそらしていたんです(笑)。
キャサリンの存在は本当に大きいですね。 エリーの一番の親友だと思うし、いつもエリーの話を聞いてくれて、いろんな起点になってくれる。 キャサリンを演じるマリさんは、すごく小柄な方なのに、天才!イキイキとお芝居される姿が、まるで蛍の光みたいに素敵だなって私は思うんです。
今週の気になるセリフ! テイスティングワード
このシーン、もう、すごく覚えています! 「大将、英一郎の前で、裸になって」というセリフの「はだか」が難しくて、どうしても覚えられなかったんです(苦笑)。 何テイクも重なってしまって、私の緊張をほぐそうと、鴨居役の堤さんがオリジナルの歌まで歌ってくださいました。 「裸になって~、裸になって~♪」って(笑)。 それでもなぜかうまく言えなくて、最終的には「HA・DA・KA」と見えないところに貼り紙をしていただいて、なんとか乗り切ることができました(苦笑)。
今週の最後では、工場のお披露目会が開かれ、ラブを語る英一郎の演説がありました。 そして、「私、お母さんになりたい」と、笑顔でマッサンに打ち明けたエリー。 「脚本にはなかったけれど、『子どもを育てたい』ってエリーから聞いたときに、ぶわーって涙があふれ出たのをすごく覚えてます。 『マッサン』の撮影が始まってから、ここまで自然に涙が出たのは初めてだったので、この涙を大事にしたいと思ったんです」と、振り返る玉山さん。 このお披露目会のシーンは、今年8月、滋賀県での野外ロケで撮影されました。 「ポットスチルを再現したこの現場は、まるで熱帯のような暑さで、すごくハードな撮影でした(苦笑)。 このときは撮影が始まって3か月半を過ぎた頃で、玉山くんもシャーロットも、実は心身ともに一番つらかった時期なんです」と、櫻井制作統括は話します 夫婦で壁を乗り越えたマッサンとエリーにとっても、長丁場の"朝ドラ"に挑む玉山さんとシャーロットにとっても、どうやらこのシーンはひとつのターニングポイントとなったようです。
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