ナスダック総合指数が金曜日の引け値で4,955.97を付けました。ドットコム・バブルのピークで、ナスダックは5,000を超えます。2000年3月の出来事です。

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あの時の高値に、現在のナスダック総合指数が限りなく近づいているので、「すわ、またしてもバブル!?」という声が強いです。

でも結論から言えば、現在はバブルの水準とはほど遠いです。因みに、当時、ナスダック総合指数の株価収益率(PER)は100倍近かったです。現在は21倍で、これはS&P500指数の17.5倍と余り変わりません。

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個別銘柄で言えば、アップルが15倍、グーグルが19倍、ギリアドに至っては11倍でしか無いのです。これはバブルの定義には当てはまらないと思います。

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今がバブルではないと僕が確信を持って語れる、ひとつのエピソードを紹介します。2000年当時、僕はH&Qという投資銀行に勤めていて、日本や欧州から来る投資家を率いて、シリコンバレーの会社を片っ端から訪問していました。年間で、のべ500社を下りません。

アメリカでは決算発表の前の一か月間は、クワイエット・ピリオド(かん口令期間)と言って、会社が投資家に会ってくれない期間があります。決算は1年に4回あるわけだから、1年のうち4か月間は企業調査の訪問が出来ないわけです。すると残りの8か月間、日数にすると160営業日で、500社を回るわけです。単純計算でも1日当たり3.13社です。でも実際には1日に6件くらいのアポが入っている場合が多かったです。

ところが当時のシリコンバレーは、余りに景気が良すぎて道路は混み混みだし、電力が足らなくなって、ローリング・ブラックアウトという、順番に停電してゆく措置すら採られていました。

停電すると、交差点の信号も消えるわけですから、渋滞は、一層ひどくなります。そんなわけで、一日6件のアポを入れていると、飯を喰う暇どころか、おしっこにもいけないような忙しさになるわけです。

訪問先企業では、IR担当者が「お水、要ります?」と言って、必ずペットボトルの水を出してくれます。だから行く先々で水をすすめられて、まるで「水飲み百姓」みたいに水ばっかり飲むわけです。それでトイレにも行けず渋滞にまた捕まる……その繰り返しです。

「ああ、広瀬さん、駄目だ……ト、トイレ、どこかにあります?」

シリコンバレーのドン詰まり、ミルピタス辺りを走っている時に、同乗していたお客さんがそう訴えたので、二人で近くのホテルのロビーに飛び込んだのです。ちょうどそのホテルの界隈は停電で、ロビーも昼間なのに薄暗かったです。ロビー脇のトイレに飛び込むと、そこは真っ暗。

「ちょ、ちょっと……これじゃ、なにも見えないよ!」

それでも用は足さないといけないので、壁伝いに手さぐりで歩いていったわけです。

「あぁぁぁぁぁ、汚ったねぇー! 便器、触っちゃったよ!」

そうです、素手で、男性用便器をしっかり触ってしまったのです。つまり、ドットコム・バブルというのは、今から思い返せば、そのくらいコミカルで、馬鹿馬鹿しい事の連続でした。

それに比べれば、今のマーケットはチャラチャラした様子は、これっぽっちもありません。

要するに、今のマーケットは、まだ買って良いわけです。



PS:ドットコム・バブル当時の様子を知りたい方は、僕が以前書いた下のKindle本を、どうぞ。