働く期間を定めた「有期雇用」契約が5年を超えて更新された場合に、その人が望めば無期雇用に移れるというルールが、4月から一部見直される。年収が1075万円以上で高度の専門知識や技能を持った人は、無期雇用に転換する権利が生じる期間を10年に延ばすなどの内容となっている。
2013年春に施行された改正労働契約法の無期転換ルールをめぐっては、雇用責任が重くなるのを嫌った企業が、5年を超える前に契約を打ち切りかねないという懸念がある。特例措置は歓迎だ。
だが問題は、企業に無期雇用を義務づけるルールそのものにある。雇用不安が広がらないよう撤廃を考えてはどうか。
特例は高度の専門性を持った人材が、5年を超えるプロジェクトに有期契約で加わりやすくするなどの狙いがある。博士の学位や弁護士、公認会計士、1級建築士などの資格の取得者らが対象になる。労働法規では高度の専門職の年収要件を1075万円以上としており、この基準を今回の特例にも使うこととした。
また定年後に契約制で継続雇用される人については、無期転換ルールの対象に含めない。
ただ1440万人にのぼる有期契約の労働者のなかで、こうした特例の対象になる人は限られる。大部分を占めるパート労働者や契約社員らが早めに雇用契約を打ち切られる心配に変わりはない。
無期転換ルールは民主党政権下で、非正規労働者の雇用を安定させようと導入された。早期の契約打ち切りを招いて雇用が不安定になっては本末転倒だ。
非正規労働者の処遇改善や正社員転換など雇用の安定化には、労働規制の強化で企業にコスト負担増を強いるのでなく、本人が技能を高めたり新しい知識を身につけたりする機会を広げることの方が確実な道だ。
成長産業で働くのに必要な技能を習得できるよう公共職業訓練の中身を見直すなど、自助努力がかなう環境づくりに力を入れたい。