緊縮財政に強く反発するギリシャへの金融支援をめぐり、欧州連合(EU)と同国は、2月末が期限の支援を4カ月延長することで合意した。財政破綻やユーロ圏離脱という最悪の事態はとりあえず回避された。しかし、債務問題と構造改革など同国が向き合うべき最も重要な課題については、議論を先送りしたにすぎない。
ギリシャが求めた6カ月の支援延長は4カ月に短縮された。歳出削減や公的資産の売却など、構造改革の中身では、具体的な合意には至らなかった。改革案はこれから同国がまとめ、EUなどが認めれば、正式に支援延長の手続きに入るという。
ギリシャは3月下旬にも資金不足に陥ると見られていた。チプラス政権は今回の合意に安堵することなく、まず実行可能な改革案をつくり、金融支援を土台に自律的な成長を可能にする道筋を示すべきだ。政権を担う以上、保護に慣れた国民を説得し、現実的に政策を運営する責任がある。
ユーロ圏に占める経済規模が3%弱にすぎない小国ギリシャに、単一通貨ユーロ体制が激しく振り回されている。ドイツ、フランスなど欧州主要国の政治指導者は、この厳しい経済統合の現実の姿を直視すべきである。
ギリシャでは1月の総選挙で、年金支給額や公務員給与の引き上げなど甘い公約を並べた急進左派が圧勝し、反EUを掲げる右派政党と組んでチプラス政権が誕生した。今後こうしたポピュリズム政治が、緊縮財政に疲れた国々で台頭する可能性は否定できない。
目先の金融市場の混乱や、ギリシャの銀行破綻を避けるため努力するのは当然である。ユーロ圏発で再び世界的な金融不安が起きては困る。だが、ギリシャ危機の本質は、経済的な問題にとどまらない。EUと対立するロシアと地理的に近いギリシャ経済を、ユーロ圏の一員として安定させることが地政学的に極めて重要だ。
チプラス政権が一貫して強気であるのも、EUにとってギリシャが戦略的に重要な地位にあることを、十分に認識しているからだろう。だとすれば、EUはギリシャを仲間として守るために、現実主義に立って協議し、必要な支援を続けるしかない。
とりわけ緊縮財政で教条的な主張が目立つドイツに、柔軟な対応を期待する。今回の合意をギリシャ再建への一歩にしてほしい。