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米英情報機関、携帯数十億台監視か 暗号鍵入手

 携帯電話の利用者情報を登録する「SIMカード」を製造する企業のネットワークに米英の情報機関が侵入し、通信の秘密を守る暗号鍵を入手していたと英ニュースサイトが19日報じた。日本を含む世界中の数十億台の携帯電話の通話やデータ通信の大半を監視できるという。

 米英情報機関による携帯電話盗聴の詳細な手口が明らかになった。英ニュースサイト「インターセプト」によると、米国家安全保障局(NSA)と英政府通信本部(GCHQ)の工作員らは2010年4月、携帯盗聴班を結成。SIMカード製造企業の社内ネットワークに侵入し、社員の電子メールを盗み見て暗号鍵を盗んだという。その証拠として、米の情報収集活動を暴露し、ロシアに政治亡命した米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏が持ち出した内部資料を挙げた。

 携帯の電波を傍受しても、通信が暗号化されているため解読できない。ただ、SIMカードに登録された暗号鍵を入手すれば、暗号化された通話やデータ通信を解読できる。米などは在外大使館に巨大なアンテナを設置し、周辺にある議会や政府機関などの通信を傍受していたという。

 侵入を受けたと指摘されたICカード最大手のオランダのジェムアルト社は20日「現時点で報道内容は確認できない。報道を深刻に受け止め、調査に全力を尽くす」との声明を出した。ジェムアルトは年20億枚のSIMカードを製造。日本を含む世界450社の携帯電話会社で使われている。

 アーネスト米大統領報道官は20日の記者会見で「市民の自由と国家安全保障との間には適切なバランスがある」と述べたが、詳細には言及しなかった。英政府通信本部は20日、日本経済新聞の取材に「我々の仕事は厳格な法律と政策の枠内で実施されている」と答えた。

 米欧メディアは13年10月、NSAが外国の要人35人の通話を盗聴していたと報道。ドイツのメルケル首相らから抗議を受け、オバマ米大統領は情報収集活動の見直しを迫られたばかり。詳細な盗聴手口が暴露されたことで、批判が再燃する恐れもある。

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