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青酸化合物を使って夫や内縁関係の男性を殺害したとして、京都府の無職の女…
青酸化合物を使って夫や内縁関係の男性を殺害したとして、京都府の無職の女(68)が殺人罪で起訴された。
警察の調べに対し、女はほかにも複数の男性の殺害を認める供述をしているという。
捜査関係者によると、女は約20年間で10人以上の男性と再婚・交際し、億単位の遺産を手にしていたという。起訴した事件以外にも被害者はいるのか、動機は何かなど、未解明な点は多い。捜査当局は全容解明に力を尽くしてほしい。同時に、供述の通りならなぜ今まで明らかにならなかったのか、検証も必要だろう。
捜査を難しくしているのは、過去の証拠が十分に残っていないことだ。事件性があると判断していなければ、遺体の解剖はされていない可能性が高い。死因を調べ直すことは難しい。
人が死亡した時の初動対応がいかに大切か、改めて指摘しておきたい。
連続不審死の疑いが強まったのは、女の元交際相手らが相次いで亡くなっていることをつかんだ京都府警が、他府県警に夫以外の男性の死亡状況を照会したことがきっかけだった。
その結果、約3年前に病死したとされていた大阪の男性(当時71)の血液が、遺体を解剖した大学病院に保管されていることがわかった。男性はバイク事故の後に亡くなったが、事故死か病死かを見極めるために司法解剖されていた。再鑑定で血液から青酸化合物が検出されたため、この事件は起訴された。
警察庁の有識者研究会が4年前にまとめた報告書「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方について」によると、警察への届けがあった死体のうち、司法、行政いずれかの解剖に至ったのは約11%にとどまっている。スウェーデンでは89%、フィンランドでは78%で、報告書は理由として人口100万人あたりの解剖医の数が、スウェーデンが約5・4人なのに対し日本は約1・3人に過ぎないことを指摘する。
医師そのものが不足しているいま、監察医や法医学者だけを増やすのは難しいだろう。警察は、検視にあたる捜査員の資質向上など、できることから対策を強化しなければならない。
日常的に人の死に接する臨床医の眼力も問われている。不審な点を認めたら、ためらわず警察へ通報するべきだ。
死因の究明は疫病や労災、事故の再発防止にも役立つ。今回の事件を、死者の残した手がかりを最大限、見逃さない制度整備につなげてほしい。
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