先日の衆院予算委員会で、耳を疑う場面があった。

 民主党の玉木雄一郎氏が、砂糖業界団体の関連企業から西川農水相への寄付について、「脱法献金だと言わざるを得ない」と追及していた時のことだ。

 首相が自席からこんなヤジを飛ばした。

 「日教組!」「日教組どうするの、日教組!」

 玉木氏は「総理、ヤジを飛ばさないで」と繰り返し、見かねた大島理森予算委員長が「総理、総理も、ちょっと静かに」とたしなめた。

 NHKやネットで生中継されていた中でのこと。首相がどうしてこんなヤジを飛ばすのか、多くの人が首をひねったに違いない。

 首相の念頭には自民党が野党時代に国会で取り上げた民主党議員と日教組との関係があったようだ。翌日には民主党からの抗議に「今後、静かな討論を心がけたい」と語った。

 ヤジは「議会の華」という。ただし、これは言論を生業とする政治家ならではの絶妙な「突っ込み」をたたえる言葉だ。

 首相はよく、答弁中のヤジに「私が答えているんですから」と顔をしかめる。それなのに閣僚の疑惑を突かれたからといって敵意むき出しで言い返すのでは、行政府の長としての矜恃(きょうじ)や品位を自らおとしめることにしかならない。

 最近の首相発言でもうひとつ気になったのは、中東の過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件にからむ答弁だ。

 周辺国への2億ドル支援を表明した首相スピーチによって、人質に危険が及ぶかもしれないとの認識はあったのか。参院予算委での共産党の小池晃氏の問いに、首相はこう答えた。

 「小池さんの質問はまるで、ISIL(「イスラム国」)に対しては批判をしてはならないような印象を我々は受ける。それはまさに、テロリストに屈することになると思う」

 そうだろうか。むしろ逆に「首相の答弁はまるで、『イスラム国』と闘う首相に対しては批判をしてはならないような印象を我々は受ける」と返したくなってしまう。

 後日の衆院本会議で自民党議員が、共産党の志位委員長の質問中に「さすがテロ政党」とヤジを飛ばした。首相の意を忖度(そんたく)したのかどうかは知らないが、悪質なレッテル貼りとしかいいようがない。謝罪に追い込まれたのは当然だ。

 国権の最高機関の中での話である。あきれるしかない発言はお断りしたい。