「マクロスライド」:初適用 低年金層対策、置き去り
毎日新聞 2015年02月08日 09時30分(最終更新 02月08日 12時15分)
一方、1984年度生まれ、30歳の夫婦世帯は、2049年度の受給開始時(65歳)に50.6%まで下がっているものの、その時点で既にスライドは終了している。もらい始めた後の下がり方は緩やかで、69年度(85歳)でも40.4%。最終的に1949年度生まれとの差は縮まる。
マクロ経済スライドは、自営や非正規で働く人ら国民年金のみの人により響く。会社員の厚生年金は国民年金と報酬比例年金の2階建て。目減りも2割だ。その点、国民年金は3割減。国民年金しかない単身者の所得代替率は現在18.4%。これが30年後には13%まで下がる。今の価値に直すと4万円台に過ぎない。
国民年金だけでは生活できなくなる−−。そんな有識者らの声に応じ、厚労省は昨年、2案を示した。非正規雇用の人に厚生年金加入への道を開き「国民年金のみ」の人を数百万人減らす案と、国民年金の加入期間を今の40年から45年に延ばし、給付を増す案だ。
だが、財源難から与党は先送りに傾いている。また今年10月から低年金の人に最大で月5000円を支給する制度も、消費増税の延期で1年半延びた。
慶応大経済学部の駒村康平教授は「マクロ経済スライドは必要」と指摘しながらも、「国民年金は年金としての機能を失いつつある。政府が近視眼的に対策を見送るなら、より重いツケが回ってくる」と語る。【金秀蓮、桐野耕一】