過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)に対し、米オバマ政権による地上部隊投入も議論されるが、壊滅は容易ではない。ネット戦略など、その術中にはまらぬことも重要だ。
ISとみられるグループは日本人に続き、エジプト人二十一人ら人質の殺害とみられる映像を次々公開、残虐行為を誇示している。
来日した米国ユダヤ人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センター副所長のエイブラハム・クーパー氏が「極端な世界観を広めようとしている」と指摘するなど、恐怖政治と大虐殺を行ったナチス・ドイツと比較する声も相次いでいる。
オバマ米大統領は、限定的な地上軍投入を可能にする武力行使承認決議案を上下両院に提示した。一方で、今週の「暴力的過激主義対策サミット」では、「軍事面だけの問題ではない」とも述べた。
米当局は、ISに合流するためシリア入りした外国人戦闘員は九十カ国以上から二万人以上と推計。ISを支持するツイッターのアカウント登録は延べ四万五千人分、支持するメッセージは一日約九万件に上るという。
リクルートに大きな力を発揮しているのが、ネットによるISのメッセージ発信だ。国際テロ組織「アルカイダ」が単純なビデオメッセージを発していたのに対し、ISは映画のような凝った映像を配信。クーパー氏は「多言語で美しいデザインのソーシャルメディアを活用し、人々をコントロールしようとしている」と分析する。ISとまったく関係のない言葉の検索で、IS関連のツイートが拡散する仕掛けがつくられた可能性もある。
ISが「国家」樹立という具体的目標を掲げていることも、戦闘員を集める原動力とされる。
サミットでは、ソーシャルメディアを使っての対抗などの対策がまとめられた。欧州連合(EU)が検討するテロを促すネットの監視と削除などの規制を国際的に広げていくことも求められる。子どもに残酷な画像を見せるのは論外だが、ネット情報とどう向き合うかの教育も検討したい。
日本人人質、後藤健二さんを殺害したとする映像公開後、痛ましい映像ではなく、子どもたちを取材してきた後藤さんの画像を広めようとする動きが、英国人ジャーナリストらから広まった。この取り組みも参考にしたい。憎悪や恐怖を広めるISのメッセージの意図を見極め、冷静に対処したい。
この記事を印刷する