最高裁:裁判員「死刑」を破棄…2件の無期確定へ
毎日新聞 2015年02月04日 21時02分(最終更新 02月05日 10時33分)
裁判員裁判の死刑判決を2審が無期懲役に減刑したことの妥当性が争われた2件の強盗殺人事件の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は3日付で、いずれも死刑を求めた検察側の上告を棄却する決定を出した。2審・東京高裁判決が確定する。小法廷は、2事件はいずれも被害者が1人で計画性も低いと指摘し、「先例の傾向から見ても、2審を覆さなければ著しく正義に反するとはいえない」と述べた。裁判員裁判の死刑判断の破棄が確定するのは初めて。死刑判断に当たり、過去の先例を重視する傾向が強まりそうだ。
2件は、千葉県松戸市で2009年、女子大学4年生(当時21歳)を殺害して放火し、強盗殺人や現住建造物等放火罪などに問われた竪山(たてやま)辰美被告(53)と、妻子の殺人罪で20年服役した後の09年に東京・南青山で男性(当時74歳)を殺害したとして強盗殺人罪などに問われた伊能和夫被告(64)。
竪山被告について1審・千葉地裁は、出所後3カ月で殺人の他に強盗強姦(ごうかん)も繰り返した点を重視し、「短期間で重大事件を複数起こし、被害者の対応によっては生命に危険が及んだ」と死刑を選択。しかし2審は「殺人以外の事件はいかに危険性を重視しても死刑の選択はあり得ず、生命を奪おうとしていない」と減刑した。
伊能被告については1審・東京地裁が「過去に妻子の命を奪い、懲役に服しながら強盗目的で命を奪ったのは冷酷」としたが、2審は「2件の関連は薄く、前科を過度に重視するのは相当ではない」とした。
小法廷は「死刑は究極の刑罰で、過去の裁判例の検討が不可欠。死刑の選択がやむを得ないという具体的で説得的な根拠を示す必要がある」と指摘。2件についていずれも「1審判決は、死刑選択はやむを得ないとする根拠を示しておらず、死刑を破棄した2審判決が不当とはいえない」と述べた。
裁判官3人全員一致の意見。検察官出身の小貫芳信裁判官は審理を回避し、寺田逸郎長官は慣例で加わらなかった。【川名壮志】
三浦守・最高検公判部長の話 主張が認められなかったことは残念だが、最高裁の判断なので真摯(しんし)に受け止めたい。