夫婦別姓を認めない民法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟について、最高裁は大法廷で審理することを決めた。大法廷では裁判官の15人全員が審理に加わり、初の憲法判断を下す。
夫婦別姓はこれまでもたびたび政府、政党内で議論されながら、そのままにされてきたテーマだ。社会全体で改めて正面から向き合い、考えていく必要がある。
民法は結婚の際、夫婦が同じ姓を名乗るよう定めている。この規定を巡り男女5人が計600万円の国家賠償を求めて裁判を起こした。一審・東京地裁は「夫婦別姓は憲法で保障された権利とはいえない」として訴えを退け、二審・東京高裁も維持していた。
法務省の法制審議会は1996年に、夫婦が希望すれば別々の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓制度」を導入するよう答申を出している。しかし自民党内で反対論が出たことなどから、法案提出には至らなかった。その後も何度か議論が起きたが、具体的な見直しにはつながっていない。
姓を変えるのはほとんどが女性だ。仕事などで不便が生じないよう、旧姓を一定の範囲で使えるようにする職場は多いが、使い分けに苦労する人は少なくない。
「家族の絆が弱まる」「子どもによくない影響がある」などの反対も根強い。とはいえ、社会のあり方や家族観が変わり、女性の社会進出も進むなか、約20年もの間、解決に向けた道筋が立たなかったことは残念だ。
最高裁は女性の再婚禁止期間を6カ月と定めた規定を巡る訴訟についても、大法廷で審理することを決めた。やはり96年に6カ月から100日に短縮する答申が出たまま、棚上げされてきた課題だ。
最高裁はいずれについても早ければ年内にも判断を示す見通しだ。政府も政治も、もはやこれらの問題から目をそらすことはできない。大事なのは幅広い国民的な議論だ。国民一人ひとりが自分のこととして、関心を寄せていくことが欠かせない。