国会論戦が佳境に入ってきた。最大野党の民主党は岡田克也代表が衆院の与野党代表質問や予算委員会で質問に立ち、格差問題を前面に出して舌戦を挑んだ。だが、目立った対案はなく、突っ込んだ議論には至らなかった。
「30年前に12.0%だった相対的貧困率が2012年に16.1%に上昇した」。岡田氏はこのデータを根拠に国民の間で格差が広がっていると認めるよう迫った。アベノミクスは失敗だと印象付ける狙いのようだ。
安倍晋三首相や甘利明経済財政・再生相は(1)所得分配の不均衡を示すジニ係数は大きく変化していない(2)相対的貧困率は保有資産などを含んでいない――などを理由に「格差が許容範囲を超えているとは認められない」と反論した。
アベノミクスについては「全体の底上げをしっかり行っていく」として、弱者切り捨てとの見方を否定した。
民主党が格差論争にこだわるのは、同じく岡田代表だった2004年の参院選にこの攻め口で勝利した記憶があるからだろう。
当時は「政府は何とかしろ」というだけでアピールできた。政権を経験した今となっては「我々はこうする」がなければおかしい。格差のあるなしだけの表面的な論戦ではもはや満足できない。
岡田氏が具体的な格差対策として挙げたのは、児童扶養手当の増額、とりわけ第3子の月額3000円の引き上げなどだ。塩崎恭久厚生労働相は財源の必要性などを挙げ、応じなかった。
歯がゆい論戦だ。例えば、手当の増額と保育施設の充実のどちらが子育て世帯のためになるのか、経済の底上げにつながるのか。その優先順位などを巡って争えば、子どものいる家族など国会の外にも話題が広がっていこう。格差に関心を持つ人は増えつつあり、もっと深掘りした議論が必要ではないか。
岡田氏はその後も「集団的自衛権に関する憲法解釈の見直しは国会に諮るべきだった」「菅義偉官房長官が選挙期間中に首相官邸を離れていたのは危機管理上、好ましくない」など、手続き論的な政権批判に終始した。
野党第2党の維新の党は「身を切る改革」に絞り、国会議員の給与である歳費の3割削減や文書通信滞在費の使途公開を訴えた。これだけで政権を託するに値する党なのかどうかは判断できない。