※イメージ画像:「わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団」UP-FRONT WORKS

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「54枚目のシングルでオリコンウイークリーチャート1位を獲ることが一番の近場の目標だと思うんですけど、ここ最近ではたくさんのアイドルグループの皆さんが勢いづいている中で“倍返しで”巻き返しできるよう、私たちモーニング娘。も頑張ります」

 毎日のようにイベントが開かれ、アイドルの聖地ともよばれる池袋サンシャインシティ噴水広場。気軽にショーが楽しめるとあって、連日人だかりができるものの、8月28日に開催されたモーニング娘。のニューシングル「わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団」発売記念イベントの集客数は桁外れだった。間近で鑑賞できる優先エリアのチケットを入手できたのは、始発で池袋にやってきた数百人のファンのみ。さらに何千枚も用意された握手券つきCDも午前中には売り切れた。冒頭に引用したリーダー道重さゆみの力強い宣言と共に、集まった数千のファンからは、地響きのような雄叫びと拍手が巻き起こったのである。

 道重の予告通り、翌週発表されたオリコンのウイークリーチャートでは見事1位を獲得。これは3作連続のナンバーワンであり、モーニング娘。が同様の記録を成し遂げたのは、まだ後藤真希・安倍なつみなどが在籍していた2001年〜2002年以来のこと。まさに一時期の停滞期を振り払うかのような“倍返しでの巻き返し”を見せつける偉業を達成したといえよう。

 「ライバルグループと同じく握手会や、多種類のシングルを同時発売して、コアなファンに何枚も同じ商品を買わせる商法のおかげ」「ジャニーズや48グループなどと競合しない発売日を選んだだけ」などという揶揄の声も上がっているものの、初動売り上げが10万枚突破するなど、過去のモーニング娘。を知らない新規のファンの増加や、かつてのファンがカムバックしているのは確かだ。

 なにより過去との大きな違いは、女性ファンの割合が高まっている点だ。マスゲームを思わせる大人数でのフォーメンショーンダンスの躍動感や、昨今のつんく♂の歌詞に描かれる“男性に媚びることなく自立した女性像”、そして無垢でありながら同時にフェミニンな色気が、同性の琴線に触れた。

 巻き返しの最大の功労者は、やはりリーダー道重さゆみ。今回のイベントでも、ニュースで取り上げられやすいよう人気ドラマのキャッチ―な台詞を引用しつつ自分たちを宣伝するクレバーさは、歴代のリーダーにはなかった資質。今回の新曲キャンペーンで使われたキャッチコピーも、道重が約2年ほど前、人気バラエティ番組『いきなり!黄金伝説。』(テレビ朝日系)で「1カ月1万円生活」にチャレンジした際に語ったひと言がルーツ。低迷期で露出が減り、素晴らしいパフォーマンス能力がありながら、そのことを世間にアピールできぬもどかしさを、彼女ほど強く感じていた人間はいなかったはずだ。アイドル向けとは言い難い過酷な企画で精神的に追い詰められながら、それでもなぜ番組に出演したか涙ながらに語ったのが、

「今のモーニング娘。を知ってもらいたい」

 という痛切な響きをもった言葉だった。当時入ったばかりだった新メンバーたちがグループの中心となり、道重が中興の祖としてトップに立った今、その名文句と共に繰り広げられたキャンペーンに、心を掴まれたファンも多かった。

 今後さらなる飛躍を果たすための課題は、道重と他の9人のメンバーとの圧倒的な知名度の格差だ。しかし高校生と思えぬウェットな色香を持つサブリーダー譜久村聖、今やモー娘。の援軍と呼ばれるユースケ・サンタマリアの一押しメンバー生田衣梨奈、抜群のダンススキルを持つ現エース鞘師里保、まぶしい笑顔が魅力的な鈴木香音、褒め上手でトークも上手く明石家さんまにも気にいられている飯窪春菜、東北出身のダンスマシーン石田亜佑美、驚きの天然キャラが出川哲朗にも絶賛された佐藤優樹、ハスキーボイスとショートカットがトレードマークの美少女・工藤遥、メンバー一の歌唱力を誇る小田さくらと、メンバーは精鋭ぞろい。

 6年ぶりの紅白歌合戦出場への期待が高まる中始まる、秋のツアーも見逃せない。
(文=ピーピング・トム・ソーヤ)