【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)がギリシャへの金融支援継続で合意し、ギリシャは当面の危機を乗り越えた。チプラス政権が反緊縮を貫けば支援が止まり、同国は財政破綻しかねなかった。EUも金融市場の混乱は避けたかった。緊縮策を巡る火種は残ったままで、債務問題の抜本的な解決は先送りした格好だ。
ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は会合後、今回の合意について「ギリシャとの間で共通の土台を築くことができた」と歓迎した。1月下旬の選挙で勝利したチプラス政権は既存の金融支援の枠組みを大幅に変更する方針を表明。EU内では同政権に対する不信感が高まっていた。
EUは16日の会合が物別れに終わった後、20日までに支援の延長で決着できるように事実上の最後通告をした。これを受け、ギリシャ政府は19日に正式に支援を申請。ドイツなどが不十分と表明すると、さらに取り組む姿勢をみせ、20日の合意にこぎ着けた。
背景にはギリシャが財政・金融で追い込まれつつあることがあった。同国政府は3月下旬にも資金不足に陥るとの見方が浮上。さらに民間銀行の預金流出が加速し、EUと20日中に合意できなければ、状況がさらに悪化する恐れがあった。ギリシャのバルファキス財務相は今回の合意で同国の金融システムが安定に向かうとの見方を示した。
EUはドイツを中心にギリシャに緊縮財政を求める当初の主張を基本的には貫いた。ドイツのショイブレ財務相は会合後「ギリシャ政府は自国の有権者に説明するのが難しいだろう」と語った。今後もチプラス政権が目指す構造改革などの内容を見極める方針だ。
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