編集委員・氏岡真弓
2015年2月21日23時11分
過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件を教室で話し合い、考える動きが広がっている。殺害されたとみられるジャーナリストの後藤健二さんの生き方について考えた学校や、教材をつくった団体もある。首相や家族、ジャーナリストの声を読み比べるなど、多角的に学ぼうという試みだ。
■発言読み比べて感想文
事件を授業でとり上げたのは、私立立命館宇治中学・高校(京都府宇治市)の本庄豊教諭(60)だ。安否の情報が刻々と変わり、ネット情報が生徒の間で流れるなど関心の高さを感じ、今月、中1の地理、高1の現代社会の授業向けにプリントをつくった。
授業では、「何が起こってもシリアの人たちを恨みません」と言い残していた後藤さん、「テロリストに罪を償わせる」と発言した安倍晋三首相、「悲しみが憎悪の連鎖になってはならない」と話した後藤さんの母、「暴力から尊い命を守ること。それが命をかけて伝えたかったことでは」と訴えたジャーナリスト団体などの言葉を読んだ。そのうえで中学生は後藤さんの生き方、高校生は日本の中東への姿勢について感想を書いた。
本庄教諭は、2004年のイラク人質事件のときも授業で取り上げた。そのときは「危険な場所に行ったのだから自己責任だ」との意見が多かった。ところが、今回は、後藤さんの姿勢に共感する声が多かったという。後藤さんに比べ、同じく「イスラム国」に殺害されたとみられる湯川遥菜さんの報道が少ないことに「同じ命なのに」と疑問を持つ意見もあった。
「生徒は真剣。事件を考えることで、世界史などで学んだことが『わかった』という感覚を持ったようだ」と本庄教諭は言う。
各地の教員仲間に、つくったプリントを提供するとメーリングリストで呼びかけると、30人近くから「授業で使いたい」と連絡があったという。
■立命館宇治中学・高校生の声
・「行くから悪いんだ」「自分のせいでしょ」としか思っていませんでした。でも、後藤さんのおかげで、私たちはより多くのことを知ることができたと思いました。
・誰も知らない、想像できない国の子どもたちの生活について、身の危険をかくごしてまで伝えてくれるすごい人だと思います。
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