東京株式市場で株価が上昇している。日経平均株価はITバブルのころ以来、15年ぶりの高値で、リーマン・ショック後の最安値(09年3月)と比べて2・6倍近い水準に達している。

 株高は、日本企業の好業績が反映している。電機や自動車などの輸出型の企業では、円安メリットを受けて今年3月期の純利益が過去最高になりそうなところが目立つ。原油安の恩恵が及ぶ企業も多い。

 ただ、今の株価は業績だけの産物ではない。日本銀行の金融緩和でお金が株式市場に流れ込み、株価を押し上げている。

 各国の中央銀行も金融緩和を続けてきた結果、株高は世界的な現象になり、経済好調の米国はもとより、デフレ懸念に加えてウクライナ紛争やギリシャの債務問題を抱える欧州でも、史上最高値水準で推移している。

 金融の世界では、巨額のお金が国境を越えて瞬時に動く。株価も、金融要因が大きければ、上にも下にも大きく動く。

 日本の場合には、約130兆円の公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資金を国債から国内株式に移していることも株価を支えているとはいえ、今後も株価がこれまでのように上昇を続けるかどうか、保証の限りではない。

 それでも、15年ぶりの株高は日本経済にとっては追い風である。この好機を生かして、日本経済が成長軌道に戻るためには、実体経済の一層の改善が不可欠だ。

 週初めに発表された昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、3四半期ぶりにプラスに転じたものの、事前に期待されていたほど成長率は高くなかった。特に、経済の柱である個人消費が0・3%増と、円安を受けて持ち直した輸出(2・7%増)に比べて伸び悩みが目立った。

 回復を本物にするためにカギを握るのは、個人消費だ。個人消費が膨らめば、企業の設備投資の回復も期待できる。

 昨年4月の消費増税もあって振るわない個人消費が上向くためには、賃金の増加が欠かせない。名目の給与額は増えているものの、物価上昇分を差し引いた実質賃金は昨年12月まで、18カ月連続で前年を下回ってきている。

 春闘の労使交渉が本格化している。円安や原油安、さらには株高で企業が受けた恩恵を賃上げを通じて家計に広げてほしい。株高による景況感の改善は賃上げにこそ、追い風になるはずである。