曽野さんコラム:反発相次ぐ…「人種住み分け憎悪生む」

毎日新聞 2015年02月21日 07時10分

産経新聞に掲載された曽野氏のコラムを巡る動き
産経新聞に掲載された曽野氏のコラムを巡る動き

 作家の曽野綾子氏が人種による住み分けを提唱するコラムを書いたことが波紋を広げている。1948年から91年までアパルトヘイト(人種隔離)政策を推進した南アフリカ共和国の駐日大使は、掲載した産経新聞に「アパルトヘイトを許容するもの」と抗議し、日本に住む外国の人々からは「憎しみの感情を生み出す」などと反発の声が出ている。【青島顕、斎川瞳】

 きっかけは、産経11日朝刊の「労働力不足と移民」と題したコラム。曽野氏は今後の日本には労働移民が必要だと説いた上で、居住区について「白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」などと書いた。これに対し、南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使は「アパルトヘイトを許容し、美化した」と反応。産経に抗議したNPO法人・アフリカ日本協議会は「アパルトヘイトは、一部の集団が、権利を剥奪された他の集団を必要なぶんだけ労働力として利用しつつ、居住区は別に指定して自分たちの生活空間から排除する(中略)システム」と指摘した。

 南太平洋ソロモン諸島出身で東京の大学院に学ぶティモシー・カレさん(31)は褐色の肌に長身。住み分けについて「交流がなくなり、憎しみの感情を生み出す恐れがある」。3年間暮らす大学寮では、外国人と日本人が共に生活しており「互いのよさが分かり、友人もできた。異文化を取り入れることができる」。コラムの内容は知っており、「反対だ」と語った。

 アイルランド出身で英エコノミスト誌東京特派員のデビッド・マクニールさん(49)は「曽野さんは人種で人を分けて考え、個性を否定している。私の息子は私と日本人の妻の間に生まれたが、どの人種に属することになるのか」とコメントした。

 曽野氏は15日の産経朝刊で、「アパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱してなどいません」と表明し、毎日新聞に対し、次のような手記(要旨)を寄せた。

      ◇

 南米には、日系人たちが集まって住んでいるコロニア(移住地)が、あちこちにありました。日本にも、自然発生的にできたブラジル人の多い町があると聞いています。しかしいずれも完全に隔離などされていません。そこにいたい人が住み、外国人も自由にその町に出入りして、食物や文化の特殊性を楽しませてもらうわけです。私はそういう形の開放された「自由な別居」があってもいい、と個人的に思っています。

 ◇曽野綾子氏◇

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