朝日新聞「慰安婦報道」に対する独立検証委員会が19日に発表した報告書は、同紙の平成3年から4年1月にかけての一連の報道について「強制連行プロパガンダ」と断じ、数々の虚偽報道によって事実無根の「日本軍による朝鮮人女性の強制連行」を内外に拡散させたと主張している。
独立検証委が重視したのは、4年1月11日付朝刊1面トップの「慰安所 軍関与示す資料」という記事だ。これは、国内で誘拐まがいの悪質な慰安婦募集を行う業者を取り締まるよう求めた軍の通達に関し、「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行」「人数は8万とも20万ともいわれる」などと事実と異なる説明文を付けた内容だった。
また、朝日が翌12日付社説で「挺身隊の名で勧誘または強制連行され」とも重ねて記した点にも着目し、「全国紙の中で、社説でこのような虚偽を書いたのは朝日だけ」と指摘した。
昨年12月に報告書を出した朝日の第三者委員会は、前者の記事について「宮沢喜一首相訪韓の時期を意識し、慰安婦問題が政治課題となるよう企図して記事としたことは明らかである」とは認めた。ただ、後者の社説に関しては特に問題視していない。
さらに朝日の第三者委は、同紙報道の海外への影響は「限定的」などと低く見積もったが、独立検証委の見解は大きく異なる。
例えば、朝日の報道の米紙への影響を検証した島田洋一福井県立大教授は19日の記者会見で、データベースで米三大紙の報道ぶりを子細に検証した結果を明らかにした。
それによると、慰安婦の訳語としての「comfort woman」と「性奴隷」、朝日が虚偽と判断して関連18本の記事を取り消した朝鮮半島での強制連行の証言者である「吉田清治」の三つのキーワードは、「4年1月以前は全く出てこない」という。
同様に、独立検証委は朝日報道が韓国や国連に与えた影響の大きさも実例を挙げて指摘している。
今月18日には、朝日報道によって「嫌がらせを受けるなど精神的苦痛を負った」などとして、在米邦人ら2000人が朝日に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。
これに関連して、米国で聞き取り調査を行った高橋史朗明星大教授は記者会見で「いじめの具体例は私が聴いただけでも10件以上ある」と説明した。日本人子弟が学校で中国系の生徒から日本人であることを責められたり、韓国人の男子から顔につばを吐きかけられたりしているという。
独立検証委は結論の中で「国際社会に蔓延(まんえん)しているプロパガンダを消し去るため、朝日が応分の負担をすることを求める」と訴えている。朝日には、一連の誤報が引き起こした事態から逃げない真摯(しんし)な対応を願いたい。(阿比留瑠比)
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【朝日新聞の慰安婦報道】 朝日新聞は昨年8月、特集記事で朝鮮半島での強制連行証言者、吉田清治氏の関連記事を虚偽と判断して取り消したが、謝罪はしなかった。その後、批判を受けて9月になって謝罪し、自紙の慰安婦報道を検証する第三者委員会を設置。第三者委は12月、強制連行を流布しながら途中から「強制性」へと論点をずらした論調は「議論のすり替えだ」とする報告書を提出した。