宇宙太陽光発電:実現へJAXAが無線送電実験…来週開始

毎日新聞 2015年02月20日 21時40分(最終更新 02月20日 22時54分)

宇宙太陽光発電のイメージ
宇宙太陽光発電のイメージ

 宇宙に巨大な太陽光パネルを広げて地上に電気を送る「宇宙太陽光発電」の実現に向けて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが、電気を電波に変え、高い精度で無線で送り、電気として取り出す実証実験を来週から始める。

 宇宙太陽光発電は、太陽光パネルで作った電気をマイクロ波と呼ばれる電波やレーザー光に変換して送り、地上のアンテナで受けて再び電気に変える。天候や昼夜に左右されず、地上よりも強い太陽光を使える利点がある。

 今回の実証実験は、この発電の中核となる無線送電技術の確立を地上で目指す。地上のアンテナを想定した「受電部」から、55メートル先の送電部にマイクロ波を誘導する信号を送る。そして、信号を捉えた「送電部」から出力1.8キロワットのマイクロ波ビームを受電部に向けて発射し、受電部でマイクロ波を直流電力に変換する。

 宇宙での利用を想定し、送電部は2.5センチと薄くした。計算上では数百ワットの電気を取り出せるという。JAXA研究開発本部高度ミッション研究グループの大橋一夫グループ長は「宇宙利用を想定し、高出力のマイクロ波ビームの方向を制御しながら送る実験は世界で初めて」と語る。

 経済産業省の委託を受けた宇宙システム開発利用推進機構と連携し、技術開発してきた。総事業費は同推進機構側が約13億円、JAXA側が約5億円。

 政府は、2030年代に宇宙太陽光発電を実現する目標を立てていた。

 しかし、巨大な発電パネルや送電設備の宇宙への輸送、組み立てなど課題は多く、大幅な遅れが予想されている。【千葉紀和】

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