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コラム:金融緩和「懐疑論」の落とし穴=村上尚己氏

2015年 02月 20日 18:10 JST
 
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村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

[東京 20日] - 1月まで海外市場では複数の不確実要因(ギリシャ問題、ウクライナ情勢、原油価格の大幅下落)を背景に、欧州以外の株式市場の上値は重く、一方で米国債などの安全資産が極端に買われ長期金利の低下が続いた。ただ、2月に入って、原油価格の下げ止まりなどを受けて、米国市場では株式、長期金利ともに昨年末の水準まで戻りつつある。

これらの不確実性をめぐる思惑で日々のマーケットは動いているが、一方で堅調な成長が続く米国だけではなく、金融緩和による刺激効果で欧州経済が復調し、先進国経済は総じて回復している。米連邦準備理事会(FRB)が現在想定しているとおりに、年央に利上げを始められる経済状況にあることが認識され、それを踏まえた(FRBの政策を反映した)価格水準が意識されたことが、2月初頭からの株高、金利上昇をもたらしていると筆者はみている。

ドル円相場は、2014年10月末の日銀による追加緩和を受けて、1カ月余りで10円以上上昇し、120円台まで円安が進んだ。ファンダメンタルズの方向はドル高円安で変わらなくても、年間変動率に相当する大幅な円安が短期間で進んだこともあり、ドル円の上昇はさすがに一服した。2014年12月以降は、米欧の株式や債券市場ほどには先に挙げたリスク要因に影響されず、1ドル=116―121円のレンジで推移している。

昨年12月19日掲載の本コラム「ロシア危機でリスクオフの円高到来は本当か」(here)で「ロシア発のリスクオフによる円高」などの後付けの解説について批判的に論じたが、とりあえず円高は短期的なアヤにとどまっている。

日銀緩和という大イベントを終え、こう着感が強まっているからなのだろうか。一部メディアによる日銀に関する記事が材料となり、ドル円相場が不安定に動く場面があった。

具体的には、「現時点で一段の追加緩和を行うことは日本経済にとってむしろ逆効果になるとの見方が日本銀行内で浮上している」と、米メディアが(日銀)関係者への取材で明らかになったとして2月半ばに報じ、そのヘッドラインだけでドル円相場が一時円高に急速に振れたのだ。日米の金融政策がドル円の方向性に大きな影響を与えるのだから、仮に日銀の政策スタンスの変化を意味するなら、先に述べた「一時的なアヤ」では済まない。

ただ、実際には、こうした記事で登場する「関係者」が、日銀執行部やスタッフなどの政策立案にかかわる人物なのか不明である。読み手には誰か分からないわけだが、筆者は、黒田東彦総裁率いる日銀の金融政策に批判的なスタンスを崩さない人物が、「関係者」として登場したと推察している。   続く...

 
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 2月20日、アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト、村上尚己氏は、金融緩和に対する昨今の懐疑論は誤りであり、正しくは金融政策転換で日本経済の正常化が始まったと考えるべきだと指摘。提供写真(2015年 ロイター)
*統計に基づく世論調査ではありません。

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