夫婦同姓などを求める民法規定が女性に差別的で憲法に反するとした訴訟で、最高裁が大法廷で審理を始めた。家族のありようや結婚観が多様化している。見直しは時代の要請である。
夫婦が結婚の際「夫か妻のどちらかの姓を名乗る」と定めた規定や、離婚後の再婚を女性のみ六カ月間禁じた規定などが、法の下の平等を定めた憲法に反しないか。
現在二件の訴訟が小法廷から大法廷に移され審理されている。夫婦別姓をめぐる訴訟は、東京や富山、京都の男女五人が「同姓の強要は男女平等に権利を保障した憲法に反する」と主張。再婚禁止規定をめぐる訴訟は岡山の女性が離婚後、規定のために再婚が遅れ、精神的苦痛を受けたと主張している。
最高裁の審理は通常、三つある小法廷で行われるが、新たな憲法判断や過去の判例を変更する場合などは、十五人の裁判官全員で構成する大法廷に移す。初の憲法判断が出されそうだ。
夫婦が結婚時にどちらかの姓を決める「夫婦同姓」は、家を重視した明治民法の規定が戦後も残された制度だ。「夫の姓でも妻の姓でもよい」と平等に見えても、現実は圧倒的に妻が姓を変えている。結婚前の姓を使いたい人に配慮し、旧姓を通称として認める職場などは増えているが、公式に認められていない。互いの姓を尊重したいカップルには苦痛となる。
六カ月の再婚禁止期間は子の父親が誰かという推定が重ならないための規定だが、誰の子なのか医学的判断は簡易になった。女性のみに離婚後に制約を課すのは差別的だ。
法相諮問機関の法制審議会はすでに一九九六年に出した民法改正案要綱で、選択的夫婦別姓導入や再婚禁止期間短縮、婚外子差別是正などをまとめている。
このうち、子どもの人権にかかわる婚外子の相続については一昨年、違憲とする最高裁の判断で差別撤廃されたが、女性差別になる規定は放置されたまま。「家族の一体感が壊れる」と主張する保守派議員の反対が背景にある。
家族のありようや結婚の価値観は大きく変わった。選択的夫婦別姓の導入は、自分らしく生きる選択肢を増やし、職業的にも必要だ。反対派の根拠だった世論も、若い世代では選択制別姓に賛成が多数派になった。
最高裁は規定の違憲性や立法の不作為に真正面から応え、法改正を促してほしい。
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