周辺事態法:地理的な制約を撤廃、政府が提案

毎日新聞 2015年02月20日 11時51分(最終更新 02月20日 14時14分)

 ◇与党協議会 公明、法律からの削除に慎重姿勢

 政府は20日午前、安全保障関連法案の整備に向けた与党協議会で、朝鮮半島有事などで米軍を後方支援するための周辺事態法を改正し、「周辺事態」という事実上の地理的な制約を撤廃する考えを示した。同法を米軍や他国軍を支援する法律に改正したうえで、これとは別に人道支援や復興支援のために自衛隊を派遣する恒久法を制定する。自衛隊を派遣できる範囲が拡大することとなり、派遣時の歯止めをどう確保するかが与党協議の焦点となる。

 政府は、周辺事態は「事態の性質に着目した概念」で、地理的な概念ではないと説明してきたが、「周辺」という言葉を用いているうえ、1999年に当時の小渕恵三首相が国会で「中東やインド洋で起こることは想定されない」と答弁するなど、一定の地理的制約があると考えられてきた。

 与党協議後、自民党の高村正彦副総裁は記者団に「地理的概念と誤解されないように『周辺』は取った方がいいと政府は考えているのではないか」と述べた。

 安保法制の整備に関する昨年7月の閣議決定は、弾道ミサイルの開発などにより、「脅威が世界のどの地域で発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る」と明記している。

 政府側は与党に対し、周辺事態法が制定された99年以降、アフガニスタン戦争で、テロ対策特別措置法により自衛隊が派遣されインド洋で多国籍軍への給油を行ったことや、イラク戦争でイラク復興特別措置法により輸送支援を実施した実績を強調。「自衛隊が我が国の平和と安全につながる活動を行う範囲は拡大している」と説明した。

 そのうえで、周辺事態法の冒頭にある目的の規定から「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など」との文言を削除し、「周辺事態」という表現を変える。

 公明党は、周辺事態法の改正により自衛隊の活動範囲や支援対象を広げることには一定の理解を示す一方、周辺事態を法律から削除することには慎重な姿勢だ。概念の名称が変わる場合でも一定の地理的な制約が残るように求めていく考えだ。同党の北側一雄副代表は協議会冒頭で、「自国防衛のための後方支援と、国際協力での局面は切り分けて議論すべきだ」と語り、改正する周辺事態法は日本の周辺有事のための法律として残すことが望ましいとの考えを示した。【飼手勇介、高本耕太】

 ◇周辺事態法

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