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悪役令嬢と呼ばれたがそれより隣のカリスマがこわい【連載版】 作者:良よしひろ

1.桜並木のオープニングだがそれよりここは校門前である

職員会議での衝撃

いろいろ面倒なので、赤宗の名前変えました。サネテル君です。
ここでは登場しませんが、よろしくお願いいたします。
 かちん、と錠の落ちる音と同じくらいに、声を掛けられた。
「黒瀬先生、職員会議だから呼びに来たぞ。やっぱ、国語科準備室にいたか」
「わざわざ、すみません」
 やたらに高い背に、長めの髪を流した、ホストのような容姿。先輩になってしまった、藍原だった。
 気を使わせたのかと、慌ててポケットに鍵を突っ込みかけよる。
「お待たせしました」
「いや、全然。理事長も来るから、早めに会議室に行った方がいいかも知れないから来ただけだ。教材研究か?」
「そんなところです」
「そういや赤宗も、国語科準備室から出てったらしいな。あいつが声出して笑うのは珍しいよ。仲良いな、お前ら」
 わかってるんなら聞くことないだろ。
 藍原は笑いながら、私の頭をぐりぐりいじくりまわした。いい人なんだけど。背も、手も大きくて、撫でるというよりは振り回すという感じだ。力も強くて、思わず顔を顰めた。
「新任は忙しいよな、いろいろ面倒な研修もあるし、雑用言いつけられるかもな。同じ高1の担任だから席も近いし、出来る限り手伝うから、遠慮なく相談しろよ」
「ありがとうございます…すみません、首がもげそうです」
「首こりか? 田舎のばあちゃんが、こりにはすっぱいものがいいって言ってた。小梅いるか?」
「…いただきます」
 藍原の見た目と中身のギャップに、まだ慣れない。それでも、もらえるもんはもらっておこう。
 小梅をありったけもらい、藍原と一緒になってこりこりと噛み始めた。
「藍原先生は1Bの担任ですね。どんな様子ですか?」
「ああ。今年の生徒はフレンドリーな奴が多いな」
「藍原先生は、いつも生徒に話しかけられていらっしゃるじゃないですか。どんな風に話しかけられたんです?」
 藍原のクラスには紫垣と、あのA子嬢がいたはずだ。出来る限り情報を集めておきたい。
 藍原は少し悩んだ後、簡単に説明してくれた。
「一人、距離感の近い女生徒がいた。逆に先生の悩みを聞きたいとか、愛に正直にあるべきだとかどうとか。あんまり話しかけてくれるから、親愛の記に小梅あげた」
「なるほど」
 戸惑ったろうな、A子嬢。もう行動に移したのか、かなりの攻めの姿勢だが、このつかめない天然を、果たしてA子嬢は落とせるかどうか。藍原が私に見せている反応も、教員同士の世間話の領域を出ない。いや、明らかに喜んでたら、足の一つも踏んでやるけれども。
「しかし、なんで私が高1の副担なんでしょう」
「いやなのか?」
 いやだ。だが正直にそんなこと、言えるわけがない。なので、一部本音を省略して答えた。
「赤宗や青景たちがいるでしょう。進路指導を考えると、私より適任がいるんじゃないかと」
 A子嬢が昨年度、私のことを「紫垣の担任」だと言っていたのも気になる。直接担任を持つことは避けられたが、それでも副担というのは微妙だ。何となく、彼女の「宣言」に近づくのは、状況的によろしくない気がする。
「ちゃんと担任には考えた相手を任せてるから。それに、黒瀬先生は自信をもっていいぞ。レインボーズの扱い、上手いじゃないか」
 いやな顔をもろにしてしまったらしい。藍原が「そんな顔すんな」と背中を叩くので、つんのめって転びそうになった。
 職員会議では、指定された席も藍原と隣り合っていたので、そのまま会話し続けたが、幼稚園の園長が新しいヅラらしいとか、レインボーズの所属クラブとかで、結局踏み込んだことは、あまり知れなかった。藍原はA子嬢に対して耐性はあるかな、それぐらいのことだ。
 それより赤宗だよ赤宗。このままだとA子嬢は破滅ルート一択だ。乙女ゲームだの転生だの、詳しいことはわからないが、今日の藍原の言動で、諦めてくれないかな。
 そんなよそ事を考えていたせいだろうか。時間ちょうどになって、会議室に入って来た姿を見て、思わず吹いた。
「なんだ? そんなに幼稚園園長の新しいヅラ面白いか?」
「いやそうじゃな…理事長が!」
 年を取った、壮年の赤宗がいた。
「だって、赤宗財閥が経営者だから。赤宗の父ちゃんが理事長」
「り…!?」
「ああでも、人事権は校長にあるし、経営以外には口を出さないから、学園には滅多に来られないな。黒瀬先生は会ったことないのか」
 あとで一緒に挨拶行くかー。
 藍原の声が、距離は変わらないのに遠く聞こえた。
 あまりにそっくりすぎて、むしろ違和感がする。赤宗をそのまま老けさせ、カリスマ性の増したような。遺伝子が仕事しすぎてる。いや奥さんの遺伝子が仕事してないのか。
 絶句する私に、藍原はびっくりするよな、とのんびり相槌を打った。
 あ、そうだ、まだ言ってなかったっけ。藍原がにこにこ笑ったまま言った。
「就職おめでとう。これからよろしくな」
 前面には、厳めしい壮年の赤宗が覇気をまとって座っている。その横には疲れた校長とストレスまみれの副校長。私の横にはホストもどきのつかめない笑顔。担当学年は問題のチート集団の高1、一名乙女ゲーム転生でヒロイン希望者あり、破滅まっしぐら。
 私は悪夢に声も出なかった。
藍原さんは「信/濃のコロン/ボ」のイメージ。
結婚すると、「うちの嫁がね…」って言ってくれる。
かわいいですよね。あの刑事さん。
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