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悪役令嬢と呼ばれたがそれより隣のカリスマがこわい【連載版】 作者:良よしひろ

1.桜並木のオープニングだがそれよりここは校門前である

ヒロイン設定の世知辛い裏事情 1

評価、感想ありがとうございます。
ブクマ4桁行ってた怖い。
なので慌てて3話目投稿です。前回の復習、というテンション。
 私は黒瀬百合である。この春、聖生・瑠守良実学園、国語の専任教諭に、正式に就職した。この時の私の気持ちを、10字以内で簡潔に述べよ。
 正答例、どうしてこうなった。
 ほんとになんで。校長に呼び出されて激ムズのテストされて、面接で堅苦しいこと聞かれて、その場で就職が決まった。「思ってたより長い付き合いになったね」、そう言った校長と副校長の顔は少し疲れていた。
 学園に就職してしまった事実を信じたくなくて、直前まで考えないようにしていた。が、入学式で入場する子ども達を見て、流石に現実を突きつけられた。あれほど絶望した新任挨拶は、世間を探しても少ないだろう。
 来賓の挨拶やら何やら、まったく頭に入らず、周りに促されるまま働いて、片付けもひと段落してからやっと、校舎に戻った。もうもたない。休みを、心の休息をくれ。とりあえず国語科準備室に避難しようとふらふら扉を開けた。だがそこには既に、つやつやした黒髪の先を、日の光に不思議に赤く透かして、先客が座っていた。
「やあ。高校1学年付、副担任さん」
 鮮やかな笑顔の赤宗に、私はひきつった微笑みを返した。
「ごきげんよう、入学生代表。素晴らしい答辞だったね。どうやって国語科準備室に入ったのかな?」
「さあ」
 愚問だね。怜悧な美貌に浮かんだ笑顔は、今日も変わらず雄弁に、私にそう言っていた。
 確かに、赤宗という学園の絶対君臨者が、国語科準備室の鍵如きで、悩むはずもないのだ。リアル・カリスマ・チートに要らぬ質問だった。
 瑠守良実学園は、日本の政治や経済を担う上流階級の、その子どもが数多く通う、いわゆるお金持ちの私立学校である。幼稚園から大学院までを擁し、日本の将来を背負う青少年の育成を標榜している。今日は、その中高合同の入学式だった。
 赤宗は、世界でも屈指の大財閥の御曹司。文武に秀で、研ぎ澄ました玲瓏な容貌に、常に微笑みを浮かべ、圧倒的存在感で学園に君臨する、誰もが認めるカリスマである。通称「皇帝」、二次元でしかお目にかかれない言葉が、赤宗には実によく似合う。
 高等部の三分の二は、学園の中等部の進学希望者が受験し、あとの三分の一は外部から受験する。今すぐ世界のトップ大学院に入れる頭脳の持ち主、カリスマ赤宗氏は、勿論断トツの成績で、中等部からそのまま学園の高等部に入学なさった。答辞はそりゃあ見事で、入学への希望と展望を慎ましく語っていながら、大企業の社長が新入社員を言祝ぐような貫禄があった。
 こいつのいる学年の副担任とか。人間として足りないものをいろいろ突きつけられてホント嫌だ。
 だがそれよりも。
「なんなの、あの朝の茶番は」
「「あれ」の、イメージ通りだったんじゃないかな? 学校の邪魔にならないようにしてきたつもりなのだが」
 赤宗は空っとぼけたが、口調自体は聞いていてうすら寒くなる程だ。「あれ」呼ばわりかあ。
 あれ、とは今朝の、桜並木での騒ぎになった、美少女のことだ。昨年度、学校見学で私に宣戦布告をした少女その人だった。遠目から見ても、あのチェリーブラウンの髪は間違いない。私は勝手にA子嬢、と呼んでいた。
 あの時は、何やら荒唐無稽なことを並べ立られてぽかんとしている間に、A子嬢は去ってしまった。が、彼女が言い捨てたセリフを検討すると、どうやらA子嬢は、女性向けの恋愛趣味レーションゲーム、「乙女ゲーム」なるものに入れあげているらしい。彼女はこの学園が、自分の知っている「乙女ゲーム」の舞台であると信じきっていて、私はそこに出てくる「悪役令嬢」。私、「黒瀬百合」を破滅させ、学園のイケメンたち、通称レインボーズを「落とし」、逆ハーレムを築こうとしている。
 それが、皇帝、赤宗の逆鱗に触れた。彼女の挙げたイケメンたちはよりにもよって、皇帝陛下が身内とみなす男子生徒ばかりだったのだ。
 赤宗が「皇帝」と呼ばれるのは伊達やノリではない。そう呼ばれるだけの実力があるから、決して小さくはない学園全体に君臨している。にっこり口角の上げ方を変えるだけで、「人格形成」を根本から変え、人生を変えてしまう。
 ケンカを売って来た時は、彼女は学校名を、「セント・ウルスラ」という、かなり気合の入った間違え方をしていたので、面接できっと豪快にやらかしてくれるだろうと、フラグが折れるのを待っていたわけだが。
 私の祈りも空しくなった。A子嬢はこの春、学園にやってきてしまったのだ。
黒瀬は赤宗の答辞を聞いてホント現実が嫌になってた。

追記:某バスケ部の赤い人に似ているとのご指摘をうけました。なんかもう表現力と想像力が無くて申し訳ない。最初、彼の名前知らなくて(本気で苗字しか知らなかった)もともと漫画を描いていた時使っていた少年の名前を、文字変えて与えたらこうなった。名前考えるの、サボるんじゃなかったなー。一度書き上げた後、変えようか悩んでいます。
モデルは一応、ロマノフ王朝のイヴァン雷帝です。性格はともかく、かなり優秀な人物だったそうで。イリヤ・レーピン作「イワン雷帝と息子イワン」の画がイメージです。あの絵、とても赤いんですよ・・・
これ以上はネタバレかもしれないので、ヒミツ。

問題あればすぐに消そうかと思っています。
問題出てきましたら感想等でご指摘お願いいたします。
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