夫婦別姓を認めない民法の規定は、個人の尊厳や男女平等などの憲法の理念に沿うのか。最高裁が判断することになった。

 地裁、高裁で退けられた事実婚の夫婦ら5人の訴えが、最高裁で大法廷に回された。判決はまだ先だが、最高裁は、高裁の判断をそのまま追認するわけではない姿勢を示唆している。

 生き方や、家族の形が多様化するなか、例外なく夫婦の一方に姓を変えさせる民法は、もはや時代にそぐわず、柔軟さを欠いている。最高裁は現実をつぶさにみて、考えてほしい。

 結婚を機に同姓になりたいと思う夫婦もいれば、そうできない、望まない人たちもいる。

 仕事で使ってきた姓を変えるのは不便だし、それまでの実績、人脈が途絶えるリスクもある。姓を変えて、自分が自分でなくなってしまうと感じる人もいる。一人っ子同士の結婚が増え、どちらの姓とも決められない場合もあるだろう。

 近年、職場で旧姓を使い続けるケースは浸透してきたが、それでも、文書の署名や銀行口座を開くような肝心の場面で、戸籍上の姓を使わざるをえない現実は今もある。

 婚姻届を出さずに事実婚を選ぶ場合、法律婚にある税制上の優遇はあきらめるしかない。

 女性だけに離婚後6カ月間、再婚を禁じる民法の規定についても、最高裁大法廷が判断することになった。こうした人生や個人のアイデンティティーに直結する問題を放置してきた国会の責任は重い。

 法制審議会は19年も前に「結婚しても姓を変えない利益を保護する必要がある」として、別姓を選べる民法改正要綱案を答申した。法務省が法案を準備し、是正の道筋をつけた。

 実現していないのは保守系議員が「家族の崩壊を招く」などと反対してきたからだ。必要な人に選択肢を与える改正なのに、それを許さない一部議員の姿勢は頑迷というほかない。

 12年の政府の世論調査では、「夫婦は同姓にすべきだ」と「希望すれば旧姓を名乗れるよう法改正していい」が拮抗(きっこう)するが、年代別では20~50代で「別姓許容」が上回る。今後の社会を担う世代の意識を重んじていくべきだろう。

 結婚で姓を変える96%は妻の側で、負担は女性に集中する。「女性の活躍を阻むあらゆる課題に挑戦する」と安倍政権は宣言している。ならばまず、選択的別姓を阻んできた自民党の姿勢を顧み、改めるべきだ。最高裁から言われる前に、国会自らが実行すべき問題である。