【動画】自衛隊法改正後、邦人輸送が可能になってから初の海外での訓練がタイで実施された=仙波理、三輪さち子撮影
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 過激派組織「イスラム国」の日本人人質事件では、海外でテロや災害に巻き込まれた邦人の保護が焦点となった。安倍政権は今国会に提出する予定の安全保障法制で、自衛隊による邦人の輸送や救出のための法整備をする方針だ。折しも自衛隊は今月、海外で初めてとなる邦人の陸上輸送訓練をタイで行った。自衛隊は何をどこまですべきなのか。訓練では課題も浮かび上がった。

 タイ中部・ウタパオ。30度近い蒸し暑さの中、車5台が1列になって進む。分乗するのは、Tシャツなどの普段着姿の日本大使館員やその家族ら9人。彼らを守るように、各車両には迷彩服に身を包んだ自衛隊員計13人が乗っている。

 突然、車列が30人近い群衆に取り囲まれた。

 「ピック・ミー・アップ!(僕たちも連れて行ってくれ)」。口々に叫び、プラカードを掲げて車に近づいてくる。隊員らには知らされていないシナリオだ。先頭の車がクラクションを鳴らして速度を落とし、群衆をかき分けて進んだ。

 自衛隊が海外で民間の邦人を飛行機や船だけでなく、車両で陸上輸送することが、2013年のアルジェリア人質事件を受けた自衛隊法改正で可能になった。米国も参加した東南アジア最大級の軍事訓練「コブラゴールド」で15日、法改正後、海外での初めての訓練が行われた。訓練は震度7の地震が起きて都市機能がまひし、混乱に乗じて反政府デモが起きたという想定だ。