ウタパオ=三輪さち子
2015年2月20日01時54分
過激派組織「イスラム国」の日本人人質事件では、海外でテロや災害に巻き込まれた邦人の保護が焦点となった。安倍政権は今国会に提出する予定の安全保障法制で、自衛隊による邦人の輸送や救出のための法整備をする方針だ。折しも自衛隊は今月、海外で初めてとなる邦人の陸上輸送訓練をタイで行った。自衛隊は何をどこまですべきなのか。訓練では課題も浮かび上がった。
タイ中部・ウタパオ。30度近い蒸し暑さの中、車5台が1列になって進む。分乗するのは、Tシャツなどの普段着姿の日本大使館員やその家族ら9人。彼らを守るように、各車両には迷彩服に身を包んだ自衛隊員計13人が乗っている。
突然、車列が30人近い群衆に取り囲まれた。
「ピック・ミー・アップ!(僕たちも連れて行ってくれ)」。口々に叫び、プラカードを掲げて車に近づいてくる。隊員らには知らされていないシナリオだ。先頭の車がクラクションを鳴らして速度を落とし、群衆をかき分けて進んだ。
自衛隊が海外で民間の邦人を飛行機や船だけでなく、車両で陸上輸送することが、2013年のアルジェリア人質事件を受けた自衛隊法改正で可能になった。米国も参加した東南アジア最大級の軍事訓練「コブラゴールド」で15日、法改正後、海外での初めての訓練が行われた。訓練は震度7の地震が起きて都市機能がまひし、混乱に乗じて反政府デモが起きたという想定だ。
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