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【社説】

デンマーク銃撃 抑止は多文化共存で

 デンマークのコペンハーゲンで「表現の自由」をめぐる集会とユダヤ教礼拝所が銃撃され、七人が死傷した。パリのテロに触発された可能性もある。若者らを過激化させない取り組みを続けたい。

 集会にはスウェーデン人風刺画家らが出席していた。イスラム教の預言者ムハンマドを犬に見立てた絵などを描き、国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ」が標的としていた。

 「表現の自由」とはいえ、宗教観、価値観の違いから、反感を覚える場合もあるだろう。しかし、暴力に訴えることは許されない。

 パリの風刺週刊紙シャルリエブド本社を先月、二人組の男が銃撃し十二人が死亡、別の男がユダヤ系スーパーを襲撃し四人が死亡した。今回の事件はこれを模したと指摘されている。

 射殺された犯人は二十二歳の男で、両親はパレスチナ難民とされる。フェイスブックに、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の指導者バグダディ容疑者に忠誠を誓う犯人のものとみられる書き込みがあったという。傷害罪で服役し、刑務所で過激派に傾倒した可能性がある点は、シャルリエブド銃撃犯はじめ他の事件のテロ容疑者らとも共通する。

 「イスラム国」が有志国連合の空爆への報復を呼び掛ける中、カナダやオーストラリアでもテロが相次いでいた。組織から直接指示を受けたわけではない「一匹オオカミ」的な犯行も目立つ。

 デンマークではシリアなどから帰国した元戦闘員らに、カウンセリングや就業支援で社会復帰の手助けをしていた。移民を抱える各国は事件にひるまず、若者らを孤立させない取り組みを続けたい。

 欧州連合(EU)はEU域外との国境管理を強化し、搭乗客情報を各国が共有する方針を決めた。一方で、独仏など二十六カ国が出入国審査を免除するシェンゲン協定の見直しは見送られた。

 テロ対策では、移動の自由、寛容さなど、EUが重視する価値観と矛盾しかねない対応も迫られるが、多文化共存社会の先駆であるEUの理念は、引き続き尊重してほしい。

 「イスラム国」が日本人人質二人を殺害したとみられる画像や映像で、日本を敵視する文言もあった。十七日からの米政府主催の過激派対策国際会議では、日本の貢献は人道支援であることを強調したい。平和主義の国であることは念を押さねばならない。

 

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