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【社説】

抱っこひも事故 命守る確かな基準を

 乳児の抱っこひもを使った時の事故が相次ぎ、業界団体が対策に乗り出した。人気製品の模造品が流通していることも発覚。メーカーは消費者が安心して購入できるよう情報提供に努めてほしい。

 親たちが子連れで移動するときに使う抱っこひも。「体に負担が少ない」と評判になり、国内で年間八十万〜百万本が販売されている。

 その抱っこひもを使った時の事故が相次ぎ、今月六日、東京都内に安全対策を考える協議会が発足した。ベビー用品メーカーなどが参加し、情報共有しながら安全対策を進めていく。

 東京都が昨年末に公表した報告では、二〇〇九年から百十七件の事故が都内で起きた。前かがみになったときや、背負うときに子どもが落下。二十七件は頭などを打って入院を要する重症例だった。製品の欠陥を指摘したケースはなかったが、一歩間違えば脳に損傷を与えて命取りになる。使用者の注意だけに対策を委ねず、メーカーはその製品が構造的に問題はないのか検証を重ね、購入目安となる情報も提供すべきだ。

 一つが安全に対する考え方だ。国内流通している抱っこひもの場合、メーカーによってまちまちだ。安全認証の「SGマーク」を取得するかどうかは各社の判断に任され、マークのない製品が多い。シェアの半分を海外品が占める現状も踏まえ、安心して選べる共通の基準が必要ではないか。

 インターネット通販が普及し、抱っこひもも例外ではない。東京都が約千人の抱っこひも使用経験者に行ったアンケートで、約四割はネット購入だった。乳児を連れての外出は大変だという事情もあるだろう。だが、商品を手にせず購入する通販のリスクも踏まえておきたい。

 最近、偽造品の排除に取り組む民間団体の調査で、米国人気ブランドの模造品がネット通販で横行していることが分かった。外見上は正規品と見分けがつかないが、強度不足だったり、縫製が粗雑なものがあった。販売業者は正規品の写真を商品説明に使ったり、使用説明書や商品の箱を複製したりしていて手口が巧妙だ。

 消費者庁は悪質業者と認定すればホームページで公開するとしている。模造品が出回らないよう、監視を強めるべきだ。

 リサイクル品など経年劣化した商品の安全性にも注意を払いたい。抱っこひもが赤ちゃんを守る道具であることを忘れずに商品を選びたい。

 

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